第2話 カネ!金!かね!

ここがキャバクラなのねぇ

広くてお洒落な照明に

フカフカな赤いソファー

ニカちゃんハウスより豪華だわ~


「ニカちゃん、こっちに来て

 ここがロッカールームだから

 荷物はロッカーにいれてね」

「はーい」


「今日は体験入店だからドレスは無料だよ

 ニカちゃんには桃色が似合うと思うんだ

 着てみてよ」


かっ可愛いドレス!

あの子はニカが着せ替え人形なのに

新しい服を一度も買ってくれなかったから

こんなドレスに憧れてたのよ~


「おぉ似合うね、いいねぇ。

 じゃあメイク道具はこれを使って」


えっメイク?したことない・・・


「わたしニカ、メイクしたこと無いわ」

「そうなの⁉マジか~

 なら僕がメイクしてあげるから座って

 僕ね、男じゃ無くて女なんだ」


う~ん、男の格好してるのに女の子?

別にそれって普通よねぇ


「ビックリした?」

「しないわ、私は女の子だけど

 剣を持って怪獣と戦った事があるもの」


「アッハッハッハ、ニカちゃんて面白いね

 店の皆は知ってるんだけど

 戸籍は女で心は男だから宜しく」


戸籍・・・なに、それ?


「やっぱり引いちゃった?」

「引かないわ、

 ニカは力を入れるの嫌いだから」


「アッハッハッハ、ホント面白いなぁ

 さぁメイク完了。鏡を見てごらん」

「うわぁ~綺麗~!ありがとう

 えっとぉ、あなた誰?」


「僕の名前は石谷いしや ごうだよ」

「ありがとう、石谷さん」

 

「支配人、体験入店のニカさんです」

「おぉ可愛いなぁ、よく見つけてきたな石谷

 上出来だぞ」

「わたしニカよ、よろしくね」


紗綾さあやさん、この子ニカさん

 体験入店なんだ、面倒見てやって」

「オッケーいいわよ石ちゃん」

「わたしニカよ、よろしくね」


「あはっマジうける~変な子」

「あぁニカさんはフランスから来たんで

 日本語がいまいちなんだよ」


「へぇ~だから髪も目も茶色いんだ

 肌も白くて綺麗よねぇ~」


うん、私は国民的アイドル人形だから

綺麗で可愛いのよウフッ


「ニカちゃん、私の真似してね」

「はい、紗綾さあやさん」


「いらっしゃいませ~お隣に失礼しま~す」

「いらっしゃいませ~お隣に失礼しま~す」

「おぉ紗綾ちゃん今夜も可愛いねぇ」


「まぁ本当の事を、ありがとう~」

「隣りの子は誰かなぁ?」

「わたしニカよ」


「ニカちゃん可愛いねぇ」

「えぇ~紗綾さあやは~?」


「そりゃ紗綾ちゃんの方が可愛いよぉ」


この小太りオジさん噓つきなの?

目が悪いの?頭が残念なの?

国民的アイドル人形のニカの方が

ぜ~んぜん可愛いのに!


「ちょっとニカちゃん笑って

 これは仕事なんだから」


紗綾さんが小声で言うから仕方ない

ニカ笑うわ

小太りオジさん、めちゃムカつくけど!


―――——  ―――——  ―――——


「ニカさん、お疲れ様。

 どうだった体験入店は」

「う~ん、お酒を作って

 つまらない話に手を叩いて笑って

 凄い凄いって全然凄く無いのに褒めて

 部品の組み立てより楽だったわ」


「アッハッハッハ、ニカさんて

 ほんとに面白い。これ今日のバイト代」

「えっこんなに貰えるの!

 ありがとう石谷さん」


「キャストさん達を車で送るから

 ニカさんも家まで送ってあげるね」

「私、家は無いの。

 ネットカフェがお家なの」


「えーそうなの?

 じゃぁこの店で働きなよ

 ワンルームだけど寮があるんだよ」

「それは、ただなの?」


「家賃は月35000円だよ、光熱費は別ね」

「トイレとお風呂もあるの?」


「もちろん付いてるよ、洗濯機と乾燥機

 それにミニキッチンも有るから

 自炊もできて節約になるよ」


ネカフェに住むより安いし

トイレもお風呂も有るなんていいわねぇ

洗濯機が有れば

コインランドリー行かなくていいし

自炊すればお金が貯まるじゃない

ナイスでグッドだわ

時給もいいし、それにドレスも着れる


「わたしニカ、ここで働くわ」

 

―――——  ―――——  ―――——


キャバクラ『Pink・Pop』で働きだして三ヶ月

一生懸命に働いてるのに、お金が貯まらない!

だって色々と出費が多いのよねぇ

ドレスに靴にバックにイヤリング、ネックレス

リングとブレスレットにメイク道具・・・

幾ら有ってもまた欲しくなる~


「ニカさん、また新しいドレス買ったの⁈

 三ヶ月で50着は買ったでしょ」

「あ~石谷さん、だって可愛いドレス

 見たら欲しくなっちゃうの~」


「いくらドレスが素敵でも

 ナンバー1にはなれないんだよ」

「う~ん、でも毎日楽しいから

 別にナンバー1で無くてもいいわ」


「ナンバー1の愛華あいかさんは

 マンション買ったんだよ」

「えっ、お家を買ったの⁈」


「そうだよ。ニカさんも頑張って

 稼げばマンションが買えるんだよ」

「でもどう頑張ればいいの?」


「まずは指名してもらえる様に

 笑顔で接客、嫌でも嫌な顔をしない」

「うん、うん」


「指名してもらえれば指名料のバックが

 貰えるでしょ」

「うん、うん」


「ボトルを入れてもらえたら

 20%バックだから

 ドンペリロゼだったら3万が

 ニカさんにバックされるんだよ」

「うん、うん」


「去年の愛華さんのバースデイは

 シャンパンタワーが10本立ったんだ」

「うん、うん」


「だから愛華さんの月収は1千万超えで

 マンションをキャッシュで買えたんだよ」

「すっ凄いわ、そんなに貰ってるの!」


「ニカさんは店で一番可愛いんだから

 頑張れば月収が1千万超えになるよ」


私は国民的アイドル人形

ナンバー1の座はニカが一番相応しいのに


「愛華さんはチヤホヤされてるの

 お客さんから可愛いって言われてるの?」


「言われてるよ」

「石谷さん、ニカ負けないわ

 絶対にナンバー1になるわ

 だから色々と教えてね」


「もちろんだよ、僕が教えてあげるから

 2人でナンバー1を目指そう!」

「ええ、目指せナンバー1よ!」


「それじゃ18番テーブルに着いて

 新規のお客様だからチャンスだよ

 笑顔でね、違うよ自然な笑顔でだよ」

「こうね」


「そうそう、いいよニカさん

 その笑顔で自分のお得意様にするんだ」

「わかったわ!」


「おぅ石谷、どうだニカはやる気出したか?」

「あっ支配人、煽りが効いたようで

 ニカのやつ俄然やる気出しました」


「頼むぞ、ニカは上玉なんだから

 店のドル箱になってもらわないとな

 ニカがナンバー1になれば

 お前も出世して金がガッポリだからな」

「はい、ガンガン稼がせますんで

 自分も夢を叶える為に出世しないとです」


 ―――——  ―――——  ―――——


石谷さんの言うことを聞いて

無駄使いは禁止して

お仕事もキャバ嬢の誇りをもって

いつでも爽やか&可愛い笑顔と

ツンデレの技を使って太客ゲットして

はや10年・・・

国民的アイドル人形ニカは

『Pink・Pop』のナンバー1になれました~!

最近は順位が落ちてナンバー3にも入れない

でもマンション買ったし

素敵な家具も揃えて

正真正銘のニカちゃんハウスよウフッ

あぁお金って最高だわぁ


石谷さんはニカがナンバー1になったら

系列店の支配人に出世しちゃって

居なくなちゃったの、寂しいわ

最後に石谷さんが

「お客さんと寝たらダメだよ」

って言ってたけど・・・

意味が分からない??


そして30歳に成ってからは

熟女パブで働いている・・・

なんでもキャバクラは20代で卒業だそうで

同じ系列の熟女パブ『Blue・Diamond』

に移りました


熟女パブはキャバクラより時給が低い!

この世で一番大事なのはお金なのよ

お金=幸せ、なんだから!


と言いつつ・・・

『Blue・Diamond』に移ってよかった~

だって素敵な出会いをしたから・・・


高山ニカ 35歳

今日は生まれて初めてのデート~

相手はお客で来ていた颯斗はやとさん24歳

設定ではニカには歴代6人の彼氏がいたけど

リアルデートは初めてだから緊張しちゃうわ


「ニカちゃん待たせてゴメンね」

「わたしニカよ、

 全然待ってないわ、いま来たのよぉ」


本当は2時間前から待ってたんだけど

颯斗はやとさんはイケメンで優しくて

服も靴も時計もブランド品

お金をたくさん持っているのよ!

イケメンだけじゃダメ、金持ちだけじゃダメ

両方を兼ね備えた男がニカに相応しいの


「イタリアン予約してるんだけど

 嫌いなら他の店に変えるよ」

「ニカはイタリアン好きよ、ウフッ」

 

うわぁ高級感溢れる店内

さすが颯斗はやとさんは金持ちだわ!


ディナーが終わって

高級ホテルのBarで

都会の灯りを見下ろしながら

2人で片寄せながら飲むカクテル

いいわぁロマンチックだわぁ~

あぁやっぱりお金は素敵・・・


「部屋をリザーブしてあるから

 今夜は2人で朝まで、いいだろ?」


朝まで一緒に居られるなんて嬉しい


「もちろんOKよっ」


部屋に入るなり抱きしめられた

チューされた

これは知ってるわ、経験済み

あの子に人形だった頃に縫いぐるみと

させられてたから

でも何でこんな事するのかしら?


あら、ベットに押し倒されたわ


「いいよねニカちゃん」

「ええ、いいわよ」


何がいいのかしら?

あっ、そんなとこ触るの・・・

あっ、服を脱がせるの・・・

あっ、えっ、なに、なに、なに?


あぁん気持ちいい

あぁん何これ

こんなの初めて

あぁん、声が出ちゃう我慢できない


「あぁ~あぁ~ん~いい~気持ちいい~」


颯斗はやとさん、ハァハァ言ってる

激しく動いてる

でもそれが気持ちいい~

どんどん激しくなってる

どんどん気持ち良くなっていく~


「あぁーーー」

颯斗はやとさんの動きが止まったわ

もう終わりなの?

きっ気持ち良かった・・・


「わたしニカよ、もう一回して」

「ハァ?・・・ちょっと待ってて」


けっきょく良い子に待って

3回もしてもらったわ、最高!

なんで今までこんなに気持ちいい事を

誰もしてくれなかったのかしら?


颯斗はやとさん、ニカ初めて経験したわ

 これは何?」

「えっ・・・初めてだったの⁈

 これは✕✕✕だよ」


そう✕✕✕って言うのね、気にいったわ

此れからも颯斗はやとさんと✕✕✕するわ


「颯斗さん大好きよ!

 こんなに気持ち良くしてくれて

 最高だったわ、またしましょうね」

「ああ、いいよ。僕が満足させてあげる」


すごいわぁ颯斗さん、お金持ちで

イケメンで、✕✕✕が上手で、お金持ちで

あぁ、お金って最高ー!


―――——  ―――——  ―――——


あれから颯斗さんと何度もデートして

何度も気持ちいい✕✕✕してもらったのに

最近は颯斗さん仕事が忙しくて

もう一月ひとつきも連絡が無いの・・・


あっ颯斗さんから電話だわ、嬉しい


「もしもし、あたしニカよ」

「ニカちゃん、今日は会いたかったのに

 従業員の手違いで困ってるんだ

 今日も会えそうに無い、ごめん」


「どうしたの、何を困ってるの?」

「お金を支払わないといけないのに

 銀行が休みで困って・・・」


えぇそうなの、会えないの?

でも、お金があれば会えるんだわ

愛する颯斗さんのために

私がお金を出してあげれば会える・・・


「颯斗さん、幾ら必要なの?」

「たかだか300万なんだ」


「それならニカが持って行ってあげる

 だから今日はデートしましょ」

「いいの?助かるよニカちゃん

 じゃぁいつものホテルで待ってるね」


やったー!颯斗さんに会えるわ

金庫から300万出して会いに行く~

愛する颯斗さんに貸してあげるわ~


「今日は、ありがとうニカちゃん

 いつかは結婚したいと思ってるよ」

「颯斗さん愛してるわ、お嫁さんになれるのね

 次はいつ会えるの?」


「それが今は新しい事業を始めるのに

 1000万必要でね

 さすがに直ぐには用意できないから

 しばらく会えないんだ」

「1000万は私が出すわ

 だから早くお嫁さんにしてね」


結婚すれば颯斗さんの物は私の物

颯斗さんのお金も私の物だもの、ウフッ


「いいの⁉出してくれるの?」

「もちろんよ、お嫁さんになるんだもの」


と、1000万貸してから

颯斗さんの連絡が途絶えた・・・

なにか事件に巻き込まれたの?

事故にでもあったの?

半年も連絡が取れないなんて

ニカ心配だわ・・・


休みの日は街中で颯斗さんを探してるの


そして見つけた

「颯斗さん!」

「あっニカちゃん・・・」


「心配したのよ、元気でよかった

 その女は誰?」

「彼女だよ」


「えっ⁉ニカが彼女でしょ?」

「はぁー、俺たち付き合ってないじゃん」


「なんで?✕✕✕もしたし

 結婚したいって言ったじゃない」

「お前と結婚したいとは言ってないだろ」


どういう事?

私をお嫁さんにしてくれるんじゃないの⁇


「私と結婚するんでしょ?

 私を愛してるんでしょ?」

「あのさぁ、なんでオバさんと結婚しなきゃ

 なんないの?愛してるなんて言ってないし」


オッオバさん⁉

私は国民的アイドル人形なのよ!


「オバさんですって!ひどい!」

「オバさんじゃん、事実だろうが

 好きもの淫乱オバさん」


「淫乱じゃ無いわ!

 私は国民的アイドルのニカなのよ!」

「マジヤバいオバさんだよな

 頭おかし過ぎなんだよ」


「もう我慢できない、お金返してよ

 貸したでしょ1300万!」

「借りてないよ。

 俺は貸してくれなんて言ってない

 オバさんが勝手にくれたんじゃん」


「ひどい!だましたのね

 ニカが一生懸命働いて

 貯めたお金なのに、返してよ!」

「触るなよババァ!

 頼んで無いのにくれたんだろが!」


「きぃー!殺してやるー!」

「うるせぇババァ!」


キャッ蹴られた、痛い

親父おやじにも蹴られたこと無いのに!


「二度と言い掛かり付けるなよ!

 淫乱クソババァ!」


うぅ痛くて動けない・・・

ひどい、騙すなんて・・・

お金が、私のお金が・・・

ウッウッウッ涙が止まらない・・・


 












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