わたしニカよ

桶星 榮美OKEHOSIーEMI

第1話 神のバカ野郎!

噓でしょ?ニカ死んじゃうの?

このまま火事で焼け溶けちゃうの?

あの子はニカと楽しく遊んでくれたのに

なんでに二カを置いてお嫁に行っちゃったの

あぁ熱い、火が近付いてくる

もうこれで終わりなのね

ニカは焼け溶けちゃうのね・・・


嫌よ!焼け溶けたくない!

あぁでも人形だから動けない

そうだ、困った時には神様が救ってくれるって

ママが言ってた

そうよ、神様は救うのが仕事じゃない


「神様お願いです、助けてください

 ニカは今まで良い子にしてました

 ちゃんと人形として

 人間の女の子と楽しく遊んであげました

 だから助けてください

 ニカを動ける体にしてください」


嫌だ増々熱くなって来た


「神様お願いです助けて

 このまま人形として焼け溶けたくない

 早く、早く」


もぉダメ溶けちゃうよー


「神様、聞いてます?

 この健気な人形の願いを

 国民的アイドルの私の言葉を

 国民的美少女人形の言葉を

 ねぇ聞いてるの神様?」


なんで反応が無いの


「おーい神様ー

 もしもしー聞こえてますかー?」


無視しているの?

ニカが人形だから?

そんなはず無いよねっ

神様は万物の創造主なんだもの


「か・み・さ・まーー

 おーい、おーい、おーい!」


ダメじゃん反応無いじゃん


「なんで無視してるんですかー

 ニカはもう直ぐ焼け溶けちゃうんですよー」


熱い!熱いよー!


「おい神!こら神!聞いてんのかよ⁉

 少しは反応しろよボケが!

 国民的美少女人形のピンチなんだよ!

 さっさっと動ける体をよこせよ!」


あーもう、もう、溶けちゃう


「キィー!クソ神がぁー!

 なにが万物の創造主だよ役立たずクソ野郎が

 おいこら!役立たず!この詐欺野郎!

 お前なんか消えて無くなっちまえ!

 死ねやクソ詐欺師神野郎!」


いやぁー溶けるー・・・


・・・あれっ?

・・・ここはどこ?


あっ燃えてる

目の前でおうちが燃えてる


あれっ私、立ってるの?

ここって見覚えがある

そうだ、あの子に持たれて来た公園だわ

なんで公園にいるの?


もしかして・・・

手が、手が動く!動かせる!

あらっ足も足も動くー!

歩けるわ、私、歩ける

あぁ神様が願いを叶えてくれたんだ

ニカを人間にしてくれたんだ


「ありがとうございます神様

 ニカとっても嬉しい

 ありがとうー!神様ー!」


でも、これからどうしたらいいの?

お家は燃えちゃったし帰る所が無い


あれっこの手に握っているの何だろう・・・

これは・・・

これはスマホだわ

でも何でスマホなんて握ってるの?


うわっ!スマホに文字が出た

【アナタハ ニンゲンモドキ ニナリマシタ

 ニンゲンハ ハタライテ 

 オカネヲカセガナイト イキラレマセン】


えっそうなの?お金が無いとダメなの?

でも働くってどうしたらいいの?


【ヒヤトイバイト ヲシナサイ

 ソノヒニ オカネガモラエマス

 ネンレイハ ジュウハチサイ

 トイイナサイ】


なるほど11歳じゃダメなのね


【ココニ デンワ シナサイ】


わかった電話するわ

「もしもし、わたしニカよ・・・」


やったーバイトが決まったわ

これで金が稼せげるのね

「ありがとうスマホさん」


わぁーお金が貰えたー

品物を箱に入れただけなのに

7200円もくれたわ


【ツギノ バイトへ イキマショウ

 アナタハ マダ カンゼンナニンゲンデハ

 ナイノデ ツカレマセン

 二ジュウヨジカン ハタラキナサイ】


そうなの?ニカはまだ人間じゃ無いから

そんなに働かないといけないの?


【ココニ デンワ シナサイ】


わかったわスマホさん

「もしもし、わたしニカよ・・・」

 

————  ————  ————


もう一ヶ月24時間バイトしてる

お金もたくさん稼いだわ

でも最近なんか変

体の動きが遅くなつてる

はっ!まさか人形に戻っちゃうの⁈


【ソレハ アナタガ スコシ

 ニンゲン二 ナッタカラ ツカレル

 ネットカフェ へイキ ヤスミナサイ】

 

あっ地図が出た

道案内してくれるんだ

「ありがとうスマホさん」


————  ————  ————


ネットカフェって眠れていいけど

お金を払うのよねぇ

うーん、スマホさんに教えられた通りに

バイト代は貯金してるけど

これだと前みたいに稼げないなぁ・・・

そうだ!バイト代は夜の方が高いのよ

だから昼間は寝て夜働けばいいんだわ

ニカって頭いい~ウフッ


バイトを夜だけにして二ヶ月、

毎日ネットカフェに泊まっても

貯金は増えてる~

でも、お金って他に何に使うの?


あれっ何だろう、体に力が入らない

はっ!まさか人形に戻っちゃうの⁈


【ソレハ アナタガ スコシ

 ニンゲン二 ナッタカラ エイヨウヲ

 セッシュ シナイト シ二マス】


えっ⁈栄養を取らないと死ぬの!

でも栄養ってなに?


【ゴハンヲ タベルコト】


それなら知ってる

ダイニングセットでご飯ごっこ遊びしてた

そうか、ニカはまた少し人間になったから

本物のご飯を食べられるようになったんだ~

なんて喜んでいる場合じゃ無い!

急いで食べないと死んじゃうわ

死ぬのはイヤー


ここがファミレスなのね

わぁ~ご飯の写真がたくさん載ってる

どれにしようかなぁ

やっぱりママの得意料理はハンバーグ

って設定だから、初ご飯はハンバーグよねっ

ママには会ったことは無いけど・・・


「わたしニカよ、ハンバーグセットください」

「ライスとパンどちらにしますか?」


「わたしニカよ、パン」

「はい・・・かしこまりました」


これが本物のハンバーグなのね

なんて美味しいの!ニカ感激!


食べたら力が入ってきたわ

此れからは毎日ご飯を食べなくちゃ

でも、お金が掛かるのよねぇ

バイトも頑張らないと・・・


あれっお腹が痛い!

ニカ病気なの?死んじゃうの?


【タベルト ウンチガ デマス

 トイレへ イキナサイ】


トイレに来たけど、どうしたらいいの?


【パンツヲ オロシテ スワレ】


あっお尻から何か出てきた!

あれっお腹が痛く無くなったわ


【トイレットペーパーデ フケ】


この紙で拭くのね


【モット フケ】


わかったわ、拭くわよスマホさん


人間って結構面倒なのね

疲れたり、お腹が空いたり、ウンチをしたり

人形ならそんなこと無いのになぁ


毎日ファミレスでご飯食べて一ヶ月になる

これだとお金がなかなか貯まらないな~

どうしよう・・・


ううん、何だか変な匂いがする臭いわ

嫌だ、私の体が臭い!


【ソレハ アナタガ ニンゲン二 

 ナッタカラデス オフロ二 ハイリナサイ】


えぇ~お風呂に入るのぉ?面倒だわ


【クサイト キラワレマス】


そうなの⁉嫌われちゃの?それは嫌よ

わかったわお風呂に入るわ


えっと、スマホさんが教えてくれた通りに

バスタオルにボディーブラシに

シャンプーとリンスとボディーソープに

着替えのパンティー、ブラジャー

それにお洋服・・・こんなに必要なの⁈

あっこの服可愛い、あっこれも欲しい


って買い物してたら沢山買っちゃった

でも他にも欲しいお洋服があるわ

もっとお金が欲しい!・・・


ここが銭湯なのね

スマホさんが教えてくれた通りに

先ずは髪を洗って体を洗うっと

よし!綺麗に洗えました~

次は湯船に浸かる

えぇ~熱いじゃない、ニカ溶けちゃう!

あぁそうだったニカの体は

もう人形じゃ無いから溶けないんだった

う~ん湯船に浸かると気持ちいいし

疲れがとれるわぁ


次はコインランドリーで洗濯っと

あぁ~もう!本当に人間って面倒だし

着る物やシャンプーだの洗剤だのって

無駄にお金が掛かり過ぎよね

もっとお金が貰える仕事って無いのかしら?

あらっこんな時間だわ

早く日雇いバイトへ行かないと


「ねぇ君、可愛いねぇ」

私に言ってるのかかしら?

私に言ってるのよ

なんたって私は国民的アイドル人形ですもの


「わたしニカよ。何かご用かしら?」

「へぇーニカって言うんだ

 君はハーフなの?可愛いね」


「ええ、私のパパはフランス人で

 ママは日本人の設定だからハーフよ」

「面白いこと言うんだね、設定だなんて」


だって設定は忠実に守らないといけないのに

なんで笑うのかしら?


「君、うちの店でバイトしない?」

「私これから日雇いバイトなの」


「なにしてるの?」

「箱に品物を詰めたり

 部品の組み立てをするのよ」


「そんなバイトより

 うちの店の方が儲かるんだよ」

「そうなの?」


「そうだよ、時給3500円だよ」

「何をするの?」


「キャバクラだよ。

 人気が出てお客が付けば

 もっとお金が貰えるんだよ」

「えぇ!そうなの⁈

 でもキャバクラってなぁに?」


「そうかぁフランスから来たから

 知らないんだね」


う~ん、確か設定では

ニカは日本生まれの日本育ちだったわよねぇ?


「ねぇこれから一日体験入店しない?

 もちろんお金は払うよ」

「どうしようかなぁ・・・」


「君なら、いやニカちゃんなら

 直ぐにナンバー1になれるよ」


ナンバー1、それはニカに相応しい位だわっ

だって私は国民的アイドル人形なんだから


「えぇいいわ、体験するわ」

「じゃぁ付いて来て」


「はーい」

何だかちょっとワクワクするわ

















 

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