第6話 チャレンジ精神は大事。先駆者になる事も大事。

「凄い! カイル様みたいな火力だ!」

「私が得意なのは水なのに、こんなに上手に火を操れるなんて……!」

「基礎は教えた! 明日から、ベンキョーは最低限以外ちません!」


「ええ!?」

「やる気がある人だけ訓練の後にしゅゆ。やればやるだけ伸びると思うけど」


 あいにく、俺は優しくないのだ。最低限でいいってやつには最低限しか教えてやらない。


「一週間後から、ビシバシ訓練すゆ。一年頑張ったから、一週間お休みしゅゆ」

 

 そう、うっかりしてたけどガチで一年お休み抜きでスパルタしてしまったのだ。

 まあ、授業といってもアニメ見まくるとかだからええやろ。一週間お小遣い付きでお休みあげるから許して。直、この学校の予算は俺提供である。

 はした金でぐだぐだ干渉してきやがったからぶった斬った。

 そもそも船核とかアニメ制作費とか、すでに色々投資してんだよなぁ。

 帝国は許す。王子に帝国マナーその他諸々の教育はそりゃ必要だからな。

 そもそも、学校を作れっていうなら、そして影響力を行使したいなら、まずは何はともあれ教師を用意するのが当然の事なんだよな。それをケチったり妨害するとか、何をしたいんだ一体。魔法学校だぞ? 国の防衛も兼ねてんだぞ? 愛国心醸造の為の教師はなんらかの形で出すべきだったな。特に社会科は重要だ。その辺、慎重に皇帝と留学生以外の生徒達にも教えていいかお伺いを立ててきた帝国教師は流石である。


 いくら俺でも、社会科教師を用意してやる事はできない。コネがないからな。王国も用意しない。社会情勢は必須科目。なら帝国が用意したものを受け取るのも吝かではない。

 

 あんまり待遇悪いなら、学校ごと飛んで帝国まで行くのもありだからな。

 別に帝国に限らず日本でもドラゴンオンライン世界でも方舟世界でも構わん。

 まあ、生徒達の希望は聞くけども、その生徒達の希望を左右する教育は俺が握っているのである。俺としては、エリート中のエリート、宮廷魔導士として各国に派遣とか格好いいなと思ってる。

 王国の役目は魔法過多症、つまり魔力を多く持つ才能ある子供らを集めた事で終わった。用無し。終了。


 生徒達にお小遣いを与えて、放牧する。ちゃんと戻って来いよ。

 こっから楽しくなるんだから。







 さて、一年生は魔法を見て、入学式をして船核を埋め込んで、部屋に案内である。

 その後、日本語の勉強をしてもらう。


 入学式のアニメは留学生に大好評だった。

 何せ、最初からエリートで母国語である帝国語はもちろん、王国語も話せる書けるものが留学生なのだ。

 

 また、勉強もスムーズで、貪欲に日本の授業動画を学んでいる。

 どうしよう、一年生が日本の小学校低学年程度と高校生程度の学力差があるんだが? とはいえ、この国の学生も意欲がないわけではない。2年生が魔法をバリバリ使っているからな。


 呪文とコインと基礎知識のテコ入れで、魔法の幅は劇的に広がった。

 日々、新しい発見がどんどん増えていく。どんどん強くなっていく。どんどん魔法が上達していく。

 学生達の中に、放課後、自主練をしていないものは1人もいない。

 なんなら、一週間の休暇中ずっと魔法の勉強をしていた子も少なくない。


 そして、中でも特に意識高い系のレナちゃんは、半年経った頃、朝食の席で俺におねだりした。


「ねぇ、ソラ先生! 私の魔コインと先生の魔コイン交換して! せんせーが竜になったの、コインの魔法でしょう!? しかも、私達の誰も持ってない属性のコイン!」

「それはいいな。私も欲しい」


 好奇心旺盛な殿下も食いついてくる。


「あれは竜コイン。魔力は魔核で生成し、竜力は竜核で生成する。そのエネルギーを、入学式で埋め込んだ船核でコインに変えている。船核は、もちろん船力も生成している。レナ達は竜核を持ってないから、竜コインは生み出せないんだよ。あと、竜力で魔法は使えないし、竜核なしで竜コインを使おうとしても効率は魔コイン異常に落ちる。体に負担も掛かる」

「メリットは? あるんでしょ、メリット。何ができるの?」


 ワクワクとしたレナちゃん。


「竜に変身して、空を飛んだり、ブレスを吐いたり、力を強くしたり。やる気があるなら、竜核もあげていい。レナちゃん成績優秀だしね。でも肉弾戦とかやる気ある? 頭脳より格闘センスがものをいう力だよ」

「あるわ!」

「あるぞ!!」

「殿下、殿下は肉弾戦に興味持たないでください!」


 側近が慌てて止める。しかし、ワクワクは誰にも止められないのだ。

 

「言い出しっぺの法則で、レナちゃんには竜核をあげよう。他の子は戦闘訓練で才能ありとされた子だけね」

「やったー!」

「じゃあ俺も! 俺も言い出しっぺの法則! この船の操縦したい!!」

「待ってソラちゃん先生! じゃあ、船力は?」

「今、皆が住んでるこの船を作ったり動かす力だよ。ということでアレン、船の構築方法だったら教えて上げてもいいけど、めちゃくちゃ頭使うし、船のマークのコインがめちゃくちゃ必要だよ」

「ええええええ! そんなのあり!?」

「やる気があってやる事もやってるなら教師としては勉強を手伝うべきでしょ」

「アニメ作りたい! 言い出しっぺの法則!」

「日本行ってみたい! 言い出しっぺの法則!」


 どうやら、アニメ会社にまた手を貸してもらう時が来たようである。


「先生もいいかな、ソラ」

「カイル様には一番良い竜核をあげる!」

「ずりー!」


 魔法学院は今日も平和である。

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