第5話 魔法の授業解禁

いやあ、文字が読めなかったというのは盲点だった。

ナーロッパ的な世界観だもんな。しょうがないか。

それにしたって、魔女魔女オンラインの魔法学校の生徒だろ?

エリートが集いそうなもんだけど、三割読める時点で凄いらしい。

教育ですわ! 一心不乱の教育ですわ!!


というわけで、各々の理解度を把握……どうやって?

日本の問題集を持ってこようにも、文字すら違うのだ。

確認したが、算数レベルもおぼつかない子も多いようだし。

魔法に関しても、なんていうか属性を暴発させてるだけって感じがする。あと地味。

うーむ。


「ソラ。今日から授業をするわけだけど、ソラも授業を受け持ったりするのかな?」

「カイルしゃま。午前はカイルしゃま。午後はソラ」

「ご、午後まるまるかぁ……」


 これでも足りないくらいである。

 ということで、午前中は準備に徹した。


「ついてくゆ」


 生徒達を案内し、DVDの見方を教え、船核を埋め込み、図書室へと案内する。


「すごい。本がこんなに……!! あ、でも全部、神様の言葉……?」


 そこで、俺は絵本を指し示したり、図書室のDVD装置を起動したりする。

 もちろん、自室でもDVDは見れる。

 そこに出るのは、幼児用の教育番組である。

 

「一週間後に、ソラの選んだご本読む。宿題」

「えっと、文字の勉強ですか? この国の文字の前に?」

「それは午前」

「午前!?」


 教師達はびっくりする。そうです。そしてお前らもやるのですよ。


「出来なかったら晩飯にする」


 俺は竜コインを使って竜へと変じた。歯をガチンガチン。


「足から順にゆっくり食う」


 俺さま、お前、丸齧り!

 これぐらい脅しておけば良いだろう。

 ガタガタっと生徒達は腰を抜かして後退る。


「頑張ってね、カイルしゃまも」

「が、頑張るよ……」


 そういうわけで、午前の授業の文字の勉強を見つめる。

 新品の筆記用具にドギマギしながら、一生懸命勉強している。よしよし。

 日本語さえマスターしてくれたら、色々教えやすくなるからな。

 何せ俺のネイティブは日本語なのである。


 一週間後、ガクブルしながら生徒達は俺の選んだ絵本を読んだ。

 えらい! 全員合格!! ひらがな読めるだけでもかなりの進歩!!


 日本語教育は一年程でなんとかなった。

 スパルタでやった甲斐があった。もちろん、日本語動画は教育番組やアニメでもあるので、魔法についての多様性や常識も学べたと思う。

 午前中の授業も、文字やら最低限のマナーやら、詰め込めたと思う。


 一度、横から軍事訓練をさせろだのなんだの言ってくるのがいたが、前提教育が必要な旨を懇切丁寧に教えてあげた。力を持った子供は危険だからね。しっかり教育しないとね。


 生徒からも魔法の使い方を学びたいとの声が上がったが、二年生までは我慢してもらう。代わりにコインを出すペースのコントロールなどは学んでもらった。

 生徒達からは魔力コインを1日五コイン徴収し、後は大切に部屋に貯めてもらっている。

 一コインはアニメ会社の為、一コインは学校のための貯蓄、一コインは生徒自身の為、一コインは授業の為、一コインは俺への報酬である。

 あっ カイル様の魔力コインは全て俺が徴収させていただきます! 授業で使うので。

 

 そして、2年目。帝国の若き王子と帝国の若き魔法使いと帝国が推薦した教師が入った。一年目は勉強である。


 まずは、一年生達の見守る中、2年生の魔法のテストをする。


「魔法の授業なんて何もしてなかったけど」

「いっぱい勉強して来たよ?」


 男の子の生徒、アレンくんが言えば、女の子の生徒、レナちゃんが言う。

 レナちゃんはわかっているようだ。


 2年生の魔法は、一年前に比べ、威力が格段に上がっていた。

 特に、意識高い系で頑張ってきたレナちゃんの魔法の威力は凄い。

 もちろん、アレンくんの魔法の威力も上がっている。


「な、なんで!?」

「これが、頭脳のちかりゃ!!」


 俺はドヤ顔で言う。


「勉強は大事って事よ。魔法はイメージなの。頭を働かせて、一番すごい魔法はどんなかイメージするのよ」


 自在に水を操り、体に纏わせながらレナちゃんは言う。

 うむうむ。


「これからも頑張る。じゃあ、全員コインを持つ」


 俺はカイル様のコインをそれぞれに2枚ずつ配る。


「カイルしゃまに預かりし炎のコインを使った実験しゅりゅよー!一緒にやってみよー!」


 カイル様のコインを握り、前に突き出す。


「炎よ!!」


 コインから魔力を引き出し、炎の球を飛ばす!!

 

「まさか、コインで魔法が使えるってこと!?」


 生徒達は驚く。


「しゃりゃに! これが、本物のマホー! 【ファイヤーアロー!!】」


 俺は、この原始人達に魔法という叡智を見せてやる。

 いくつもの炎の矢が、的を貫いた。


「さ、やって!!」


 カイル様に群がる帝国からの留学生よ、君たちは日本語の勉強からだからあと一年は我慢してね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る