第4話 許可は取っているので安心してくださいBYアニメ会社

同盟国の王国に聖人が現れたという。

眉唾な話だったが、どうやら事実らしく、停戦ということになった。

その聖人は学校の教師となり、後進を育てるらしい。


興味があったので学校の入学式に行った。

かなり上等な布地の、変わったデザインの制服の子供達が所在なさげにしている。

聖人になったという教師に、生み出すようになったという不思議なコインを強請りつつ時間を潰す。

彼らの制服の気合の入れようと、学校の建物が合わないなと思っていたら、なんと空を飛ぶ神の建物に押しつぶされてしまった。

思わず呆気に取られて、そして嬉々として中に入る。

来賓の王国の貴族には、腰を抜かして逃げた者もいるようだが、勿体無いことをすると思う。


中は食堂らしき場所や会議室らしき場所、畑などいろいろな物があって面白い。

時間になって探検を終え、部屋に滑り込むと、部屋が暗くなって護衛が緊張した。


壁が光った。


それから、始まるのは動く絵による演劇だった。


凄い。これが商業神の御技。


天上の音楽とでもいうべき調べは全く聞いたことのない曲調ながら胸がワクワクとするもので、物語も面白い。荒唐無稽だとは思うが、空を飛ぶ建物が現れたのだ。神の基準ならばなんでもないということだろう。

色鮮やかな物語は美しく、あらゆる部分で私を魅了した。


決めた。

この学校に帝国の生徒達も入学させる。留学という奴だ。断じて王国において行かれてなるものか。むしろ私が留学したい。絶対楽しいし、直接的な力になる。


ソラと呼ばれた本神か御使か、とにかく人間ではないだろう子供に、ダメもとで自分を主役とした劇も作ってもらえないかと頼んでみる。もちろん留学の件も。


「来年、試験に受かれば許可する」という言質をとって帰り、一年後。


 私は入学早々、一枚も薄い丸い円盤をもらった。


「叩き台が出来た。こんな感じになったけど、変更点があれば教えて」


 それから、私はDVDとやらの見方を教えてもらった。

 出てきた主人公は竜の呪いで女の子にされた帝国の王子、すなわち私だった。

 それが男に戻る為に大冒険をするらしい。

 すごいぞ、元の英雄譚が影も形もない。あと登場人物の半分が女の子もしくは女の子に見える男に変わっている。


 護衛は蒼白になったり激昂したり吹き出したりで忙しかったが、私は爆笑一択だった。


「はっはっは! 好きだな! いや、大好きだぞ、商業神様のセンス!!!」


「これを広めたりグッズを売ることの許可を頂けるなら、1話お望みの通りの物語をかくとソラ様は仰せです」

「望み通りか!! 全く信用ならんな!! はははっ」

「わらいごとではございませんぞ、殿下!!」

「ちなみにグッズとは」


 そこで、女体化した自分のグッズとやらが並ぶのをみて、私は再度笑った。


「良い良い、思う存分売り捌いていいぞ。そういえば代金も払ってなかったからな」

「俺が払った」

「おや、そうなのか。それは申し訳ない。正規の代金をきちんと払おう」

「良いよ。一回カイルしゃまを助けてくれれば」

「ああ。わかった。しかし、今度は私にも監督させてくれ」


 神監修のアニメ12話と私監修の映画は帝都で上映され、支持者が急増し、兄上に睨まれた。

 そんなに羨ましいなら、兄上も頼めば良いのに。


 女の子にされてたまるか、権威に関わる? それはそう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る