第16話 旅立ち
「この
アレグリアは、頭の高いところで髪をくくっている
「お嬢様はいつも髪をおろしていらっしゃいましたからね。
「あちらでは、ずっとこれをつけるの?」
「そうですよ、髪の色を変える魔石具ですから。お嬢様のような
アレグリアは
「この
「もう、お嬢様。あんまり髪をいじってはいけません。お部屋で
ローズに叱られ、アレグリアは鏡を鞄にしまった。
それでも、馬車の窓にかすかに映る自分の姿を気にしているようだった。
アレグリアとローズは、
「やぁ、アレグリア。少し遅かったね」
教会の前ではディアマンテ
「お父様。ディアマンテ家の
「はは、心配ないよ。ここはディアマンテ家が
「それなら安心できますわ」
「…いいかい、アレグリア」
公爵はアレグリアの肩に手を置き、真剣な顔をした。
「お前が
「わかっております、お父様。
「よろしい。…だがね、何かあったときは、必ず帰ってくるのだよ。この父はいつでもお前の味方だからね」
「…はい。ありがとうございます、お父様」
公爵とアレグリアはじっくりと別れの
「さぁ、別れの
公爵と共にアレグリアを待っていたフィニース
「我がフィニース辺境伯家の者が、アレグリア様たちを馬車に乗せて、ラルカンスまでお連れします。我が家の者以外は、
アレグリアとローズはフィニース辺境伯に導かれ、馬車に乗り込んだ。
「今度は
「何をおっしゃいます、アレグリア様。あなたは今から、正体を知られないよう、身分を
「あ…、そうだったわね。辺境伯の言う通りだわ。自覚が足りなかったようね」
しゅんとしたアレグリアに、フィニース辺境伯はにこりと笑いかけた。
「賢いアレグリア様なら、きっと上手くやれますよ。でも、万が一助けが必要になったら、いつでもフィニース辺境伯家に来てくださいね」
「でも、わたくしはラルカンスへ行くのよ。助けを求めたくても、国境を超えるのは時間がかかるわ」
「大丈夫ですよ。これをお持ちであれば、ね」
フィニース辺境伯はいたづらっぽく笑い、馬車のドアから手を差し入れた。フィニース辺境伯の手には、ペンダントがのっている。
「このペンダントは?」
「我が家の
「まあ。それは心強いわね。ありがとう」
「私からのささやかな贈り物です。アレグリア様の
馬車のドアをフィニース辺境伯が閉めると、馬車はすぐに動き出した。
アレグリアは窓に顔を寄せ、公爵や辺境伯が見えなくなるまで手を振った。
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