魔法学園

第14話 出発前夜

ついに辺境伯家へんきょうはくけつという前日、アレグリアは寝室でローズに髪をとかされている。


「お嬢様、本当にローズも一緒に行くんですか?」

「当然じゃない」

「ローズはお嬢様と違って、そもそも魔力まりょくもないんですよ?」


ローズの言う通り、彼女には魔力がない。

公爵の秘密の部屋には、魔力量を測定できる道具もあったのだが、ローズには魔力が全くなかった。

もともとローズが生きていた前世の世界には魔法が存在しなかった。

ローズに魔力がないのは、魔法のない世界からやってきたせいだろうと、アレグリアは考えている。


「魔法学校には魔力のない者も通っているわ。魔法犯罪まほうはんざいから身を守る方法や、魔石具ませきぐの使い方を学ぶのよ」


「そうかもしれませんが、ローズを連れて行っても、今後何が起きるかは予測よそくできませんよ?原作の悪役令嬢は処刑から逃れるために、不本意ながらラルカンスへ逃げるんです。お嬢様はそうではなく、自ら進んで行くわけですから」


「あら、わたくしはローズを予言者よげんしゃ扱いする気はないわ。わたくしたちがお友達のように過ごせるせっかくの機会だと言うのに、ふいにするつもりなのかしら?」

 アレグリアはいたづらっぽく笑う。


「もう、お嬢様ったら!ローズをやる気にさせるのがお上手なんですからぁ」

 ローズは赤らんだ頬に手を当て、腰をくねくねと動かした。


「わたくしと一緒に来てくれるわね、ローズ?」

「もちろんです!」

 ローズはいそいそと明日の旅立ちの準備をしに自室へ戻った。

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