補完の幕間③:ディオメという孤児・中編
銃を構えられた時点で逃げ切れる可能性を失った。だから、僕は深々と地面に落ちるくらい頭と膝、両手を屈した。
「お願いします! 今、ここで起きたことを話しません!
僕はもう、こうするしかない。もう、
「うるせぇよ、低脳の餓鬼が! 脅かしやがって、てめぇら親子が
囲まれた兵士たちに蹴られ続けた僕はただ泣き呻くしかできなかった。砂埃で汚れた涙と鼻水を啜り、咳をこぼすしか出来なかった。
「お前の糞親父はよ、お前が
兵士たちの嘲笑と罵倒、醜き怒声が僕の頭の中にこだまする。蹴られる度に自分の弱さを苦く噛み締める。そうだこの人たちの言う通りだ。僕はお父さんのおかげで惨めにならずに済んだ。それなのに、お父さんを失って、その仇に乞おうとする僕はこの世で一番惨めになったんだ。もう、生きるのが…
「俺たち軍人の為にお前のような人に必要とされないデブは死ぬべき…」
僕は心の余裕を失っていく中、一つの銃声が僕を目覚めさせた。気が付けば、僕を一番強く踏んづけていた兵士がバランスを崩したかのように倒れ、脚の甲に赤く塗られた穴を見せられた。
「あっ!? 脚!? 何なんだよ!? 何で由緒ある軍人である俺が撃たれるんだよ!?」
「それはてめぇが由緒なく軍人ではない糞以下の何かだからじゃねぇか。」
僕は声の方を向くと、金髪と屈強な肉体を持つ軍人と彼を護衛するかのように後ろを歩く赤髪褐色の軍人が現れた。金髪の軍人は拳銃を持ちながらも、僕の方に近づく。
「おい、てめぇ! 軍律違反だろうが! どうして…ひっ!?」
「黙れ、外道。中亜連並の糞豚の次はお前らを殺したっていいぜ。」
そうとは関係せずに撃たれた軍人の取り巻き達は金髪の軍人を襲おうとするも、前列の一人は赤髪の軍人が速い動きでナイフを喉元を突き付かれ、後列の何人かは遠くからの射撃に阻まれる。
金髪の軍人は僕の前に屈んで眼を合わせる。いかつい顔を出来るだけ解し、目一杯の優しい表情で声を掛ける。
「坊やがディオメか、親父さんとは世話になっている。悪かったな、俺たち軍人がしっかりしてないからこんな目に遭わせてしまった。」
彼は僕を優しくも強い温もりで抱きしめ、背中を撫でる。僕は呆気に取られるも、いつしか涙が止まらなくなった。冷たくなる母親の優しい笑顔、母の死と僕の不幸を嘆く、謝り続けた父の涙、そして、その父を裏切った僕を救った彼の眼差しが両親の愛を思い出させた。
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