補完の幕間③:ディオメという孤児・前編

 僕のお父さんはZU-1番地第二部隊隊長だった。でも、僕とお母さんは兵士ではないので、兵舎ではなく、貧民街スラムの実家で貧しさと空腹、穢らわしい環境でお父さんの帰りを待っていた。周囲の人々から戦争屋の家族として忌み嫌われ、罵声と石を投げつけられた。それでも耐え続け、耐えるしかなかった。お母さんはこの環境に耐えられず、衰弱してしまいました。

 お父さんは嘆いて、お母さんの骸を抱き抱え、泣き崩れた。今でも、鮮明に覚えている。その頃から僕や周囲に住んでいた子供たちに部隊の兵站を分けて貰いました。僕と同じく飢えに苦しむ子供達がお父さんに群がっていました。

 お父さんはそれを誇らしげに喜び、配給を続けた。かつての僕たちを蔑んだ周囲の人々は生きる糧を得たことに喜び、

その褒美なのか僕への虐めもなくなり、一緒に遊ぶようになったり、食糧をお裾分けをしてくれた。僕はみんなの明るい顔を見て、お父さんが素晴らしいことをしてくれたと誇らしかった上にそんな彼の子であることで自分がみんなに認められることが嬉しかった。

 でも、ある日からお父さんが来なくなり、配給が止まった。そして、僕はみんなからまた蔑まれ、虐められた。

 虐められる日々に戻るのが嫌で、貧民街スラムを必死に走り抜きながら、お父さんを探し続けた。

 そんな中、郊外でお父さんと共に食糧を配っていた部隊の同僚たちが焚き火の前で配るはずの食糧を餌に他の部隊の軍人たちとトランプや賽子を使ったギャンブルで奪い合っていた。

 その光景を物陰から見ていた僕はお父さんの仲間であるはずの男たちの話を盗み聞いた。

「ははっ! あいつを戦場に置いて来て良かったぜ! 亡くなったアバズレ女と残った糞餓鬼とかほざいて、必死に追いかけた後ろから銃弾を頭に撃たれた間抜け面は傑作だったぜ!」 

「何が、隊長だ! 俺たちが食糧を賭けていたことを知ったことで脅して、貧民街スラムの砂利どもに分けるなんてよ!」

「今更、正義漢をぶりやがって、碌に会わないせいで、お嫁さんとやらおっんだのによ。ギャハハハ!」

 僕は衝撃に青ざめ、堪えた怒りに震えた。今、目の前にいる父親の仇を殺したいと思った。

 でも、勝てない。赤子の手を捻られる大人が相手だ。銃を持ってるからすぐ殺される。

 でも、帰れない。そのまま、帰ったとしても、飯を恵んでくれない僕は貧民街スラムから虐められる畜生以下の存在だ。ふと、そう思っている間に兵士の一人が気がついた。

「おい、なんだ? あの餓鬼は?」

「あいつはあの糞隊長とこの!? やばい! あいつ、貧民街スラムの糞どもに言いふらす気じゃ!?」

「おっ、おい、てめぇら! 銃を構えろ! こんな所を軍部に知られでもしたら…!」

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