第二十二話:お前は誰だ?

「まさか、こんな武器を隠し持っていたとはな。」

 鉄人の呟きに対して、アラウスは返事の代わりに周りの兵士を支持し、銃弾の雨を喰らわす。

 その雨は止み、鉄人はその攻撃によって、身体や顔のフレームにヒビが入り、悲痛に悲鳴を上げる。

「が、ああ、貴様…」

「人の話を聞かずに襲うのはお前だけじゃねえ。テメェら! 一気にとどめをさせ!」

 銃弾の雨を再会させ、アラウスを含む兵士たちは無慈悲と沈黙に徹し、かつて優しかったあの頃の戦友の面影を記憶から封じ込めようとした。

 再び止んだその時、鉄人はかつてのロードであるかのように弱々しい声を上げる。

「助けて…くれ…私は…死にたくない…消えたくない…助けて…くれ…アラウス…私の…親」

 アラウスはロードの命乞いに歯が軋り、割れるような嫌悪感を抱き、持っていたグレネード・ランチャーを頭に放つ。

「あいつが! ロードが! そんな命乞いをする訳ねぇだろ! 俺たちの戦友は誰よりも強かった! 俺の親友は誰よりも優しかった! お前は本当に…誰なんだ!」

 三度の銃弾の雨が放たれようとした時、鉄人のフレームが赤黒くその一瞬で合金の網が麻紐のように裂かれ散ったと思ったら、その中心から突風が放出され、砂埃が嵐のように上がり、辺り一面の視界が不鮮明ブラック・アウトになる。

「隊長を護…ぎゃ!?」

「おい! なにぐぁ!?」

「ひっ、ひぃ! たっ、助ゔぇあ!?」

 アラウスは自分の周囲から次々と仲間の断末魔が聞こえ始め、背筋は凍り、肌が青ざめ、恐怖で体が震え、身体機能よりも精神機能が麻痺した。

「隊長! 危ない!」

 アラウスはディオメの叫び声と後ろから倒れた衝撃で我に帰り、砂埃が晴れた瞬間に目撃した。

 首を切られ、頭蓋を失った仲間たち、後ろ首から喉元を貫かれ、自分自身を護るように横たわるディオメの姿、

「ディオメ…、みんな…ちきしょう…」

 そして、瓦礫の山から獲物を捉えた猛禽のように俯瞰し、悪魔の如き狂気を秘めた鉄人の姿だった。

「私が誰かだと。私はこの身体の最初の持ち主、最初の意志、お前が名を与えた人工知能のデータよりもずっと前に存在し、削除されたはずのプロトタイプのデータだ。私こそが真なる兵器ファースト、お前が望む偽りの失敗作セカンドはもういない。」

 アラウスはやっと理解した。ロードの中に眠るもう一つの正体を、しかし、かつての命令に従うだけの鉄人ロードや心を知り、穏やかになった親友ロードとは違う、冷酷、無慈悲、そして、殺伐とした殺意のように明確な黒い意志を感じさせた。

「お前、まさか、心があるのか!?」

「心とは似て非なる。私は心を必要としない思想、つまり、人類否定が表明化インプットされた対人殺戮兵器ヒューマンキラーだからだ。」

「何が人類否定だ! 確かにこの無限な争いを起こしたのも、この世界を生き地獄に変えたのも人間だ! でもな、こんな世界にも生きるべき人間が…!」

 アラウスは気絶したディオメを横に眠らせてから立ち上がり、生意気を見せるかのように説法しようとする。

 それに対し、ロードもといファーストは血塗れの超周波振動電磁刃サイバーエッジをアラウスの喉元を突き付け、彼の雄弁を黙らせる。

「何も人類が愚かだから争いが起きたとか、人類を消せば世界が救えるという太古の物語マンガみたいな幼稚で簡素な思想など抱いてなどない。そもそも、このような世界でないと私のような人工兵士が存在する意味が無くなる。」

「じゃあ、何だ? 何がしたいんだよ!? お前も、あの糞爺も!?」

 ファーストはアラウスの憤りに満ちた面構えを顔を近づかせ、冷たい視線を送り、冷たい侮蔑を吐く。

「お前のような愚かで浅はかな人類を殺す為だけだ。」

「は?」

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