第二十一話:作戦決死行

 何もかも変わり果て、闇に堕ちたかのように張り詰めた殺戮の意志を周囲の空気から感じてしまうロード、否、鉄人は何事も興味や感情を持たず、貧民街スラムの在民や捕虜全てを排除し尽くすという任務を面白さもつまらなさも感じず、淡々とこなそうとする。

 その一歩を踏み込んだ時、自身のセンサーから周囲に物陰にまだ潜む兵士の存在を知った。どうやら、あの褐色肌の兵士たちだけではないと、また包囲されたと、思わずうんざりするほどの。人の心を持ち合わせず、理解しようとしないはずの彼は声を出す。

「出てこなくてもいい。探して殺すだけだ。」

「つれねぇこと言ってんじゃねえよ。先に喋った癖によぉ。」

 アラウスの何気ない会話が指示であるように一斉に十四人の兵士が現れた。その部隊に含まれるアラウスとディオメは鉄人の前に向かい合って立つ。ここにいる兵士は幾たびの覚悟を目頭に込め、彼だけを見つめる。

「お前、何者だ? あいつが、ロードが全ての記憶を消去デリートさせて、亡骸の人形として操られるのは分かる。けどな、お前は何もない量産型とは違う。お前にある重く、暗く、恐いような何かは何なんだ?」

 ロードはアラウスの物言いに再び溜息を吐く。

「質問も、会話も、邂逅の暇さへも必要ない。ただ、標的を抹殺するそれだけだ。」

「そうだろうよ! そういう無慈悲な冷たさはあの糞爺科学者に似てるぜ…なら、それはこっちだって同じだ!」

 アラウスが指示を出そうとした瞬間、ロードは彼に一直線に飛び駆ける。第一部隊の司令塔である彼を殺せば、蟻のような団結も蜘蛛の子のように散らせると。そう思い、赤黒く光る超周波振動電磁刃サイバーエッジを振りかぶろうとする。

 しかし、その前にディオメがロードの前に駆け抜け、その刃が内蔵された右腕を強く掴んだ瞬間、投げ付けられる。その光景を見たアラウスは分かるかのように不敵な笑みを溢す。

「カハっ!?」

「どうだ、うちの部隊自慢の怪力を。前のあいつならディオメがアレンやヘルメに並ぶくらい強いことを分かってるはずだがな。」

 ロードは倒れた拍子に現れた砂埃から抜け出し、立ち上がる。

「いいだろう、全員抹殺だ!」

アラウスと共にディオメも完全に標的として決定し、向かおうとした瞬間、

「放て!」

「なっ!?」

 兵士全員は閃光煙幕弾フラッシュスモークを投げつける。すると、その手榴弾グレネードから強く眩い光とその光を乱反射させる煙が放出される。

「猫や子供を騙せても、私は騙せないぞ!」

 光が大量にレンズを襲い、脳内コンピュータの処理速度を攪乱され、視覚を封じられても、意気込んで、煙の世界を振り払おうとする。だが、その前に

「第二、放て!」

 鉄人が狼狽しているであろう煙幕の中心に目掛けて、特殊記憶合金で出来た特殊性高緊縛網弾スペリオルネットを銃型射出機にで放つ。

 たちまち、鉄人は狼狽えながら悲鳴を上げ、両腕脚胴体

を拘束される。

「さぁ、決着を着けようぜ、親友。」

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