補完の幕間②機械の兵士と人間の兵士:後編

「お前が勘違いしていることを三つを解らせてやる。覚悟しろよ、俺は隊長程、優しくねはねぇからな。まずは一つ目ぇ!」

 俺は思いっきり殴った。鉄屑野郎は困惑していたが、俺は奴の胸倉をしっかりと掴み、目を見合わせ、言い放つ。

「お前は確かに兵器だ! だがな、物心を考えるわ、下手な良心を見せつけていい子に取り繕うわ、あの糞科学者の文句をぶつぶつ言うなら、もう人間なんだよ! 生物も無機物も関係ねぇ! 心が有れば、誰だって人間になれる!」

 俺の激に応えたのか、奴は機械仕掛けの脚で俺の俺こかんを蹴り上げ、反抗する。

「痛ってぇ…おいおい中々様になってるじゃねぇか…」

「なら、私自身は何故アラウスたちのような人間と比べたがり、卑下するような考えが頭の中から離れられないんだ! 私の心にある劣等感と罪悪感が何なのかを答えろ!」

「知るか! てめぇの気持ちなんて! 自分で考えろ! 次に、ふたーーつ!」

 俺はそう叫び、ガードが甘い左の脇腹を横薙ぎに蹴った。アイツは右に倒れ飛んだが、すぐに身体を起こし、再び俺に掴み掛ろうとする。

「この時代にとって軍人は罪人と同義語だ! どんなに立派に取り繕っても、大量殺戮とは変わらねぇ! 死ねば魔王サタン冥府の神ハデスが眠る地獄に直行する! そんな者に憧れるくらいなら、軍人じゃなく、工業用ロボットになりな!」

「それは軍人家系に生まれたヘルメや誇り高きお前たちの民族グルカへいを汚す発言だ! この無理矢理な争いが溢れたとしても、自分が望む意味を求めたはずだ! 私にとってアラウスたちが自分のような無慈悲さも浅はかさも感じられなかった!」

 こいつ、一丁前にべらべらと恥ずかしいこと言いやがって、今どき、英雄症候群ヒーローシンドロームなんてのは意味がねぇんだよ!生存者の罪悪感サバイバーズギルト背負ったて、無駄なんだよ!だから…

「なら、三つ目はこう言ってやる! 人を殺した苦しみってのはな受け入れて、諦めるんじゃねぇ! 殺した魂全てを背負って、そいつらの分まで正しく生きようとするもんだ! 兵器おまえ軍人おれたちのような外道者アウトローはそういう在り方しか出来ねぇんだよ! だか…」

 俺は渾身に込めた左拳を右手で掴み捕らえた奴に振り回しながら、決め台詞を放つ。

「逃げんじゃねぇ!」

 奴は大きく吹き飛ばされ、背中を殺風景な大地へと打ち付けられた。

「がぁ!? …あっ、ああっ…」

 奴は憑き物が取れたかのように化学煙スモッグの空を眺め、顔では分からない清々しさを感じた。俺たちしか分からない原理だが、あいつの顔色が変わらないように見えて、感じる。まぁ、声色や態度に出易い程、正直な奴だからか、今の状況に陥ったさへも分かる。

「お前、もしかして自分に罰を与える為に、俺が追い詰めるようにしたのか?」

「すまない。お前の、アレンの厳しさは部隊のみんなは誰よりも知っていた。アラウスだったら、私だけでなく、彼を追い詰めてしまうから。」

「お前、お人好し過ぎて、腹黒過ぎて、馬鹿過ぎるだろ。機械のくせに人間に憧れるなんざ、矛盾を抱えすぎなんだよ。」

「私は私が許せない。殺した兵士たちの憎しみを想う度、殺した兵士たちの恐れを見る度に、自分がどんどん異質な化け物に見えてくるんだ。考えれば考えるほど深く私の中の嫌悪感にがんじがらめになる。」

 俺は溜め息を吐いた。思えば、奴、ロードは俺にとって煩わしかった。強いくせに弱気で、おべっかや偽善を並べ、他人の顔色ばかりを気にし、甘え、媚びへつらい、人間とは違うことと糞創造主への不満に愚痴をこぼす。俺にとっての駄目人間だ。まぁ、そういう人間性は悪い意味で褒めてもいいだろ。俺たちもアラウス隊長の側を離れたくなくて、ロードと同じことをしたんだからな。

「まぁ、まとめて言えば、お前は俺たちと同じ罪ある人間で、隊長にとっての親友で、俺にとっての一応の同僚で、そんなお前を含む俺たちは苦しみを背負わなくちゃならねぇ。」

 ロードが上半身を起こしたタイミングで俺は手を差し伸べた。そして、こいつは戸惑いつつも、喜びの感情を露わにし、俺の肩に支えられ、こいつの故障けがを治す為に創造主兼糞爺の研究室に向かう。

「まぁ、何だつまり、一人で抱え込むなっての。」

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