補完の幕間②機械兵士と人間兵士:中編

 今、ありのまま怒ったことを話すぜ。気にいらねぇロボット兵士の相談に乗ったら、告白されちまった。信じられねぇようだが、本当だ。よし逃げるか。

「ちょっ!? ちょっと待ってくれ!? 何故後退りながら、いきなり走る構えを取るんだ!?」

「うるせぇ! こちとら、同男性愛主義者ホモセクシャルじゃねぇんだよ! ただでさえ、異性との出会いがないからって薄い淫乱冊子の趣味はねぇ! てめぇの人工知能、腐ってるんじゃねぇか!?」

「いや、勘違いしてる!? 理由は分からないが、勘違いしてるのは分かる! 私が仲良くなりたいのはアレン、お前を尊敬しているからだ!」

「はっ?」

「私は飛行戦を繰り広げている傍ら第一部隊の戦闘を観察していた。いつでも、彼らのピンチに駆けつけるように。だが、そこで見たお前の戦い方は凄かった。銃も使わず、民族短刀ククリナイフ2本だけで銃弾の雨と敵陣の敵軍に向かって、切り裂き舞う姿はまさに戦神のようだった。」

 何、変な褒め方してんだよ!? 下手な詩人ポエマーかなんかかお前!?

「分かったから、ようは何が言いたいんだよ?」

「私はアラウスから心のことを学んだ。心を持ったのなら、これからの行動をどうするかを考えたんだ。」

「んなもん、心が有ろうと、無かろうと俺たちは敵兵を殺すしかない役割じゃねぇか。変化なんてものは何一つ…」

「それは同じ同士ならの話だ。アラウスやアレンはだが、私は全くだ。」

 兵士?兵器?詩的表現ポエマティックの次は言葉遊びワードパズルかよ。こいつは相変わらず減らず口が立たないな。

「確かには大量殺戮はしやすい。それは敵味方以前に戦争に関係のない者たちを巻き込み、傷つく。だが、は心を持つ故に彼らを護ることができる。今までの私は兵器だった。自分以外の命に無関心で、ただ命じられるままに殺戮を単純化していった。心を知ってから、命の尊さも人の心も知った。

…だから、私は自分の存在意義を見失った。」

 段々早口になっている奴の物言いに重々しさと苦しさを感じた。これだけ意味不明に言葉を羅列させて、奴の人工知能あたま冷却装置りせい爆発オーバーヒート寸前で湯気を出していやがるのに、奴は本能で言葉を吐き続ける。

「戦場で敵兵たちの悲鳴を浴びる度、彼らの死に際に私を化物と罵りられ続ける度、私は自分が分からない内に自己嫌悪というものを覚えた。でも、アラウスやお前が戦う姿は違った。生きる為や仲間の為に戦い、抗うことに強い意思や魂を感じる。心があるからこそ、気高く生きられる。今まで殺した敵兵たちに報いられる…だから、」

 ああ、なるほど。こいつの言いたいことが分かった。つまり、

「自分が人を殺し続けた責任から逃れたいだけだろ。だからって、そのことを隊長に言い難いからって、俺に言うか、普通? お前も狡猾だな。隊長の尊厳を損なうことをわざわざ、俺で試しやがって…」 

「違う、私はただ…」

 俺は鉄屑野郎の腑抜けた面を引き締めるかのように、殴り上げアッパーカットを喰らわした。

 さてと、少々荒いが、手痛いお説教をしようじゃねぇか。


 

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