補完の幕間②機械兵士と人間兵士:前編

 俺はアラウス隊長の指揮の下で戦い続けた。他部隊の兵士からは敵国の捕虜と忌み嫌われ、後ろ指を刺されるが、それは実力を見せつけ、黙らせたことで従順な帰属意識を示した。そうすることでグルカ兵の誇りだけでなく、自身の闘志を満たしていく。アラウス隊長の、剣として、盾として戦うことが誇らしくなった。

 しかし、そんな満ち足りた日々にあの機械野郎が入ってきやがった。アラウス隊長に感化されたか、機械的無慈悲さが軟化され、子供の表情を模倣するかのように健気で、友好的な態度を取っているが、いきなり性格が変わるなんて気味が悪いだろ。普通、あとその、とって付けた真面目さがなんかムカつく。

 だが、一番ムカつくのは戦闘能力の高さだ。高速飛行の機動力と高い演算能力による戦術の構成力、おまけに目や耳が良すぎて、偵察能力が高い。完全なる兵士の理想像だ。

 しかも、アラウス隊長とは仲が良い。ていうか、距離が近い。隊長の知識を学習する為だが、優等生のように教授に勤勉で、幼子のように好奇心が強い…

 よし、本題に移そう。そんなささいな不平不満の日々が悩み続くが、突然、機械野郎が俺の前に現れた。

「頼む、私に戦い方を教えてくれ。」

「はっ? 馬鹿にしてんのか? お前なぁギルバードを潰したのお前だろ? なんで、わざわざ戦い方を学び直さなければならないんだよ?」

 ギルバードの一戦は人工兵士の有用性を知らしめた。それは一つの兵士で軍を壊滅した総合的戦闘力だ。というか、わざわざ量産しなくても、こいつ一人だけで資材的負担コストリスクを抑えられるんじゃねえか?

「それは飛行戦に対しての評価だ。私は飛行速度は高いが、地上走行速度は一般並みだ。飛行装置が不能に陥り、敵陣ど真ん中への墜落で包囲されたら、99.9%勝ち目がない。地上戦は特にアラウスの率いる第一部隊が戦略や機動力の活用性に置いて、私より群を抜いている。」

 確かに、癪だか言う通りだ。俺たちの部隊は多対一の戦略によるチーム戦闘力と回避特化の機動力を売りにしている。 

 しかも、俺たち部隊内のコミュニケーションは割と円滑だ。なんせ、アラウス隊長のもとに集まったのは能力や意識で仲間外れにされた者や俺のような敵国捕虜やディオメのような貧民街スラム出身の民間人でだから、爪弾きにされた共通のつながりで支え合って生きている。だから、情報伝達力や士気に関して、第一部隊は強い。

 しかし、それらの利点を可能にしたのは、アラウス隊長の人望、人徳、責任能力、ムードメーカーとしての素質で皆を惹きつけ、職業軍人であるヘルメ副隊長の戦略、戦術で奇跡的に成り立っている。特に、アラウス隊長は副隊長より戦闘経験や技術が劣っていても、戦線の前に赴き、先導することでカリスマへと昇華している。そういう不思議な人間、いや、超人だ。だから、地上戦で教えられるのはあの二人が適している。

 そう言ったら…こいつ、意を決したように声を張り上げ、気持ち悪いことを言った。

「実は、お前に一目惚れして、仲良くなりたいんだ!」

「はっ?」

 言っておくが、俺にそういう趣味は無い。

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