補完の幕間① アレンという戦士:前編

 グルカ兵、それは新世界大戦や帝国主義さへも存在しなかった太旧暦時代に存在した戦闘民族。ネパールの厳しい山岳と熱帯の猛暑の中を暮らし、民族短剣ククリナイフで白人兵を圧倒した最強人種で、近代になって傭兵業を専任した偉大な先祖様たちだ。。

 俺、アレン・スパルスはZZZZ年オールゼットイヤーの代のグルカ兵の末裔で、その強さと脅威は健在だった。

 俺たちの故郷に何者かの原子爆弾が堕ち、自然の恵みごと一帯を放射能に汚染された。

 安住の地を奪われた俺たちは本来ならかつてのヨーロッパ諸国という商売相手が所属しているユーロ統一帝国に身を寄せようとしたが、

「お前たちの故郷を滅ぼしたのはユーロ統一帝国という南蛮共だ。証拠なら幾らでもある。我らの諜報員が盗聴した奴らの嘲笑に、計画資料、そして、お前たち故郷付近に確認された原子爆弾の破片にユーロ語の製造番号が書かれている。

我らに従えば、復讐の機会を与える。」

 中亜連合帝国やつらはユーロ統一帝国が故郷を原子爆弾で襲ったと吹聴され、捏造された証拠を見せられた。いかなる誇り高き戦闘民族でもこの終末戦争の狂気に堕ちいりやすく、俺たちは判断を見誤った。

 その結果、ユーロ統一帝国での戦争の前戦で使い捨てのように特攻させられた。それだけではなく、毎日一食、古びた住居、強制的な帰属訓練といった劣悪な環境ただでさえ少ない一族の数を餓死者や自殺者として擦り減らした。

 ついには、俺たちが五人の若者までに減った時にネパールを原子爆弾で襲ったのは中亜連合帝国軍であると知らされた。

「我々はな、貴様らが使える兵器だと踏んで、南蛮共から盗んだ原子爆弾を貴様らの故郷にぶつけたんだぞ! なのに、貴様らは戦場で死ぬどころか、与えた筈の安住の地に不平文句を抜かし、死ぬとはな! しかも、南蛮共、特に第一部隊に手こずり負って!」

 しかし、遅すぎた。すでにユーロ統一帝国の兵士を殺したことで亡命が不可能となり、しかも、俺たちには半径20kmを破壊する遠隔操作爆弾内蔵チョークで縛られた。

「貴様らのような戦闘にしか頭にない役立たずなど、特攻爆撃などで十分だ! 最後に役に立ててよかったな、ガハハハハハ!」

 豚のように醜い嘲笑は戦闘民族の誇りを最底辺深く穢された怒りはこの時代に生きる俺たちへの失望に変わり、せめて敵地へと特攻し、討死しようとした。

 その夜、俺たちがいたユーラシア戦線第一基地にユーロ統一帝国軍が誇る第一部隊が襲来した。完全なる奇襲に中亜連合帝国軍は焦り、俺たちグルカ兵を囮に逃げ出そうとした。万が一の場合、爆弾があれば、第一部隊は殲滅できる腹積りだ。

 第一部隊、奴らの戦いは感嘆に値する。部隊を五人一組に分け、常に多対一を心掛け、個人戦に持ち込まず連勝した。それだけじゃなく、一人一人が持つ高い機動力と戦闘力を活かし、戦場を縦横無尽に駆け巡り、銃弾の雨を掻い潜り、敵を駆り尽くす。まさに、戦士の鑑であり、彼らと最後に戦えるのは誇らしく感じた。

 襲来した数は二十名。その内、五名はグルカ兵と遭遇した。アレンは他の四人を奮い立たせる為に名乗り上げる。

「我が名はグルカの長、アレン・スパルス! 我らが一族は中亜連合帝国の糞豚共に騙され、貴殿らの同胞を殺した! しかし、我らはグルカの戦士として貴殿らと一戦を交わらなければならない! 例え、それがあの糞豚共の思惑だとしても、この一戦で穢された我らグルカの誇りを取り戻す!」

 その時、五名の内一人が前に出て、脚腰を凛として立ち、背筋を伸ばし、声を張り裂ける。

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