第十八話:急転直下
兵舎にて、アラウスは椅子代わりの鉄製の箱に座りながら、黙り込み、物想いにふけていった。自分から去ったロードの後ろ姿が脳裏に浮かぶたびに頭を深く掻いて、視線を地面に移す。
ロードには確かな心があった。怒り、羨望、そして、自身への失望と嫌悪、人間的要素は十分あった。
しかし、その心を保つ為にはあまりにも人を殺し過ぎた。死者が亡霊となる恐怖、戦争によって何もかも奪われた者たちの怨嗟、それら全てを背負うにはあまりにも若すぎた。
それゆえに全ての
「いつまで、あの鉄屑野郎を引き摺っているんだよ。」
ヘルメは眉間に皺を寄せながら、半分はアラウスを慰め、半分はロードへの怒りに燃えていた。
「あいつは隊長の恩を仇で返した奴だ。今まで我慢していたが、今度会って、無表情のしけた面しやがったら、ライフルの銃床の硬い角をぶつけてやる。」
「スナイパーにとって、大切な銃壊す気ですかい、ヘルメ副隊長?」
アレンはヘルメを諌めるが、彼も同じく、自身の髪と同じく、顔を赤く染め上げる。
「俺たち第一部隊の指針はただ一つ、俺たちの隊長、アラウス・武山を信じることだ!隊長の期待を裏切ったあいつは許せねぇ!」
そんなアレンとは対照的にディオメは後ろめたいように頭を俯いて、おどおどと話す。
「でも、ロードくんも俺たちと同じくアラウス隊長の優しさに惹かれたんじゃないかな。人を殺す罪悪感に押し潰される気持ちは僕にも分かるよ。それに、ロードくんは隊長と同じで僕に対して侮蔑しなかったんだ。」
「それがどうした。隊長の下から離れた時点で俺たちは許さねえよ! 今からでも、あの糞爺の研究施設にかち込んで…!」
「それでどうなるんだよ。」
アラウスは立ち上がるも、まだ顔に悲壮な表情が浮かぶ。
「元々は俺が軍規を破って、捕虜の親子と関わりを持ったせいであいつが苦しむきっかけを作ったんだ。そもそも、俺も同じだ。戦争で奪った側の癖に無責任な同情であの子を傷つけた理由も作ったんだ。心から逃げるなって生意気に言ったら、この様だよ。」
ヘルメはアラウスの胸倉を掴み、睨む眼で怒鳴る。
「こんな無駄な戦争が続くのも、民衆が苦しみ腐るのも、あの人工兵士を生んでしまったのも、全部、俺たち軍人のせいだろ! 自分だけが悪いと思い上がってんじゃねぇ! 俺たちはアンタがこんな時代に抗いたいから戦ってるんじゃねぇのかよ!」
「そうだ。俺もあいつも同じなんだ。だから、俺はアイツに…」
その時、遠くから爆発音が鳴り響く。アラウスたちがその音の方向に目を向けると、斜向かいの第四部隊、第五部隊の兵舎が燃えていた。
「何だ、何が起きた!?」
「隊長! あれを…!」
ヘルメが燃える兵舎の上に指差したのは銃や
「
「でも、何で僕たちを襲うんだ!? ちょっと待って、あれってまさか…!?」
「
そして、その群れを率いるのは赤い目が浮かぶ殺戮兵器と化した…
「ロード…なのか…!?」
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