第十三話:寄り道
ZU―1番地の居住区にいる人民は他国との戦争で得た捕虜を入れ、3万人。ほとんどの内政を軍事に割り当てるこの国の居住区の様子はほとんどがスラム街扱いで、路地にごみが散らかり、空気中に砂埃が舞い、そこに住む人々の瞳には絶望と憎悪が入り混じる。
ロードは路地に落ちていたカーテンのような襤褸切れをローブのように身に纏い、正体を隠すが、居住民の鋭い視線に痛みを感じる。その痛みに耐えながらも、アラウスに追いつく為に物陰を転々と潜める。
アラウスも居住民が無益な争いを齎した兵士の一人として目の敵にされるも、その睨みをものともしなかった。それどころか、道行く孤児たちが目を輝かせながら、彼に近づいた。
「おじさんだ! ねぇねぇ、遊んでよ!」
「また、神様のお話を聞かせてよ!」
「悪りぃな、みんな。俺はこれから用事があるんだ。それが終わったら、たっぷり遊んでやるよ。」
「本当? 約束だよ。」
「ああ、約束だ。」
ロードはディオメとの話を思い出す。アラウスは孤児に対して、自らの食糧を与え、彼らの飢えを養ったり、ロードと同じく知識や神々の話を教授している。最初、孤児たちは戦争屋を見る不信感を募り、アラウスと仲良くなるのに時間が掛かったらしい。かくいうディオメも、元々は孤児の一人で、食いっぱぐれないようにアラウスのスカウトを受けたらしい。
ロードはアラウスと孤児たちが小指を結び、約束の印を交わす姿に自身の罪悪感を募らせる。何故なら、彼らにとって兵器そのものである自分は怪物だと恐れられると思った。今まで、殺した敵兵のように血涙を流し、鼻血を啜り、憤怒と絶望に塗れた表情を幼子にさせてしまう恐怖でいっぱいで、より一層顔を覆い隠した。
それでも尾行は続き、アラウスはある古い一軒家に辿り着く。彼は玄関の扉を叩くと、重く擦れる音と共に扉が開き、ある姿を見せ、ロードは衝撃を受ける。
それはかつての自分が襲い、アラウスが救った親子たちの長男だった。
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