第一話:鉄人無双

 XXXX年オールエックスイヤー、世界人口の急激な増加や地球温暖化の進行が原因で食料や燃料などの生きる上で必要な資源が世界の半分以上が失われ、それらを巡る暴動や紛争・テロが世界各地で多発し、世界秩序は混沌の兆しを見せた。

 この事態を解決すべく、国と国が互いに力を合わせるために国同士を併合し、一つの大帝国を築き、技術力を集中させ、生産力を高める「帝国主義計画」が世界各地で実行された。  

 それにより、ヨーロッパの中心国と併合した「ユーロ統一帝国」、北欧とロシアが併合した「ノースランド大帝国」、中国などのアジア諸国が併合した「中亜連合帝国」、紛争をやめたアフリカ全土が併合した「全アフリカ同盟帝国」、南北アメリカが併合した「南北統一アメリカ合衆帝国」ら五大帝国が生まれた。

 しかし、この四大帝国の出現により、世界の軍事力バランスが崩壊し、緊迫とした臨戦態勢が世界を包んだ。さらに、世界情勢の中心である「南北統一アメリカ合衆帝国」の首都が謎の爆発によって、人民もろとも消滅し、国家システムを機能不全させ、弱体化。その結果、各国の監視状態のタガが外れ、残る四大帝国は戦争意欲を爆発し、「新世界大戦ネオワールドウォーズ」が勃発させた。

 それから数十年後のZZZZ年オールゼットイヤー、「新世界大戦ネオワールドウォーズ」から続いた争いによって自然の緑は焼失し、七つの海は蒸発し、人類の大半以上約七割は滅び、化学兵器によるスモッグが美しき青空を覆った。

 世界が崩壊しても、今さら和平を結べなくなるほど政治情勢が崩落し、無駄な争いが続いた。他国への憎しみ、戦争への強迫観念が入り混じる中、兵士は地獄さえも滅ぼそうとするかのように未来を見失った。


 オーストラリア独立国、XXXX年オールエックスイヤーにて全アフリカ同盟帝国から襲撃を受け、新世界大戦ネオワールドウォーズへの兆しとなったシドニー海戦を行い、ユーロ統一帝国の横やりにより停戦した後も、四大帝国への防衛として軍事力を高めた国である。

 ZZZZ年オールゼットイヤーになってからも独立を掲げ、防衛に専念し、蒸発した海底に建てられた軍事都市ギルバードを第一防衛拠点とした。

 そこにユーロ統一帝国の残党であるZU―1番地が物資や資源の強奪という海賊行動で攻めていた。

ギルバードにいる40万の兵士と比べ、ZU―1番地の部隊人数は5万ほどである。しかも、守る側の方が武器や軍備も整っているのに対し、攻める側の方は帝国自体が崩壊したため、古い武器の使い回しと、圧倒的不利な状況だった。

 故に、戦場の入り口である軍事都市の鋼鉄の巨扉防衛線では旧式の実弾銃マグナム・バレットを攻め入った兵士が最新機種の光線弾銃ビーム・バレットや戦車で待ち構えた兵士を圧倒した。ギルバードの部隊はまるで猟犬が追い回すかのようにZU―1番地の部隊を徐々に包囲する。

その時、スモッグの空と枯れた海の大地の間に弾丸のごとく銀色の何かが戦場に向かって、飛翔している。この世界に生きている鳥や活動できるジェット機がないはずなのに。

指定領域ターゲットエリア到達まで3分。戦闘形態コンバットシーケンス移行準備セットアップ。≫

 戦場の上空に着いた何かが荒れる兵士たちの粗い群雄割拠を目視するや否や、最前線のど真ん中に電源が切れたかのように頭から落ちていった。

指定領域ターゲットエリア到達完了。誤差0.00。≫

 その姿は両翼の仮面を持つ面構え、鎧のように包まれる胸、ケーブルに包まれた手足と胴体、明らかに機械で出来た異形の鉄人であった。

 その異形を見た兵士たちは敵味方問わず誰もが静止した。人形が落ちるが如く壊れるのではと。その不安がよぎるかのように鉄人の頭と地面はわずかな差が生じた時、低空で宙返りをし、立ち上がった。

 兵士たちは皆、鉄人の姿に息飲んだ瞬間、それは動き出した。

≪前方に敵を確認サーチ戦闘形態コンバットシーケンス準備完了セットオン戦闘コンバット行動オペレーション開始スタート。≫

 身を前に出し、右手から超周波振動電磁刃サイバーエッジという名の青白い電気のように光る刃を突き出し、目の前にいるギルバードの兵士一人を喉から切り刻んだ。

「かはぁ!?」

 ギルバードの兵士たちは後悔した。息を呑む暇をあの異形を打ち抜くに使いたいと。そう思い立ち、光線弾銃ビーム・バレットを撃つ。

 しかし、その弾丸となった光線の光速よりも先に鉄人は避け、

「がっ!?」

 狙撃者の首を刎ねては殺し、

「うぐっ!?」

 近くにいた兵士の心臓を貫いては殺し、

「ぎゃあ!?」

 さらに近くにいる兵士の胴を真っ二つに切り裂いては永遠に殺し続けた。

「前方、未確認兵器確認。」

「砲撃、よーー……」

 そんな異形に戦車が攻め込むが、超高速飛行により、すぐさま車体の前に来た鉄人が

「未確認兵器が接近……」

「やっ、やめ……」

超周波振動電磁刃サイバーエッジでバターのよう切り落とす。

「あっ、ああ……あああああああああああ!」

 殺される標的たちは悲鳴を上げては逃げて、捕まえられては殺される。その光景を上空のあるドローンが監視していた。

 味方であるはずのZU―1番地の兵士たちも戦慄した。この鉄人には誰にも勝てないと敵味方が思う。

 すると、ZU―1番地の兵士たちの無線通信機から報告が入った。

『ZU―1番地全部隊に告ぐ。今、目の前にいる未確認兵器は我々の所有物だ。故にその兵器に続き、敵兵を殲滅しろ。』

 その指令を聞いて安心したZU―1番地の兵士たちは我らが兵器であるという鉄人を無理矢理信じ込み、ギルバード軍事都市へと強行突破した。

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