お金を稼いで装備品を買って冒険者ギルドへ行こう
帝都コートー区の格安宿屋
カフェで話していたら二人は船を漕ぎ始めた。夜明けだもんな。子供には徹夜は無理だよな。
完全に寝ちまったから、俺は会計を精算して、二人をおんぶして近くの宿屋まで運んだ。
ここの女将は以前の俺と面識がある。子供には特に優しい人だから当面はここを拠点にすればいいだろう。
「あんた、どっかで見たことある顔だね〜。死んだあいつの弟? そんなわけないわよね。……あんた、まだ若いのに苦労しそうだね。出かけんなら二人の事は任せておきな!」
「ありがと、おばちゃん」
俺はこれからの事を考えた。
二人には闘技者になるための説明をした。
レベルを上げる、冒険者免許を取る、ダンジョンボスを倒す。
正直、普通に闘技者を目指す者なら何でもない壁だ。
元幼馴染パーティーは12歳の頃にダンジョンボスを倒した。
……あれは俺のチートがあったからか。
一番の問題があった。それはパーティーは4人編成が決まりだ。ということはあと一人必要だ。本来ならもっと人数が必要だ。
パーティーを補佐してくれる裏方の人間。元幼馴染パーティーでは派遣社員を雇い、その仕事を回していた。
四人目はひとまず置いとこう。
「まずは装備品と道具が必要だな。重騎士用と……戦女神って何系がいいんだ?」
装備品は非常に高額だ。ダンジョンでもドロップ出来るが質が悪いものが多い。本来なら鍛冶屋に素材を渡して作ってもらうのが一番いいが……。
俺はとある場所に足を伸ばすことにした。俺のホームグラウンド。
元手は1000Gのみ。ひりひりするぜ。
「っしゃ!! 来たぜ来たぜ大当たりだ!!」
俺が座っているスロット台の横にメダルが積み重ねられる。1000Gなんて一瞬で無くなる額だが、俺は気合を込めてボタンを押したんだ。
当たると信じたら当たる。いや、運命を引き寄せるんだ。
というわけで、俺の1000Gが20万Gに変える事が出来た。本来ならここから全財産を突っ込んで更に増やしたい所だが……。
「ちゃんと冒険で金を稼がねえと思考がおかしくなる。あいつらに良い影響じゃねえしな」
大当たりしすぎて出禁になるのも嫌だし。
幼馴染ハウスに戻って自分の装備品を調達すればいいと思う。
だが、俺は追い出された人間だ。それにもうユウヤじゃない。セイヤだ。
だから、ユウヤのモノは必要ない。これからどんどん稼いで前よりも良い装備品を作ればいいだけだ。
とりあえずマックで朝飯テイクアウトしてアイツラと一緒食べながら今日の予定を立てるか。
ここのマックはダンジョンの近くにあるからこの時間は冒険者と闘技者で結構混んでる。
マックに入ると、奥の席の方から声が聞こえてきた。
「違うんだ! 酒のせいじゃない、だから私から酒を奪うな!!」
「マリ、お前レベルの減少が45と言ったが嘘付いたな?」
「そうよ、あんた本当は28じゃない!! なんでそんなに弱くなってるのよ!!」
「なんでマックに酒なんか持ってきてるんだ。しかも丁寧にペットボトルに詰め替えて……」
「なんなんだお前ら……、ユウヤが死んで悲しくないのか……私には酒の力が必要だ……」
「うるさいわね! あんた、今からダンジョン行ってレベル上げなさいよ!! 私だって今日のDJイベント断ってレベル上げするんだからね!! こら、飲むんじゃないわよ!」
……うん、俺はユウヤじゃない。セイヤだ……。
ふと、疑問に思った。俺が今まで溜め込んでいた経験値って、もしかして他の奴らに行き渡っていたのかな……?
「もぐもぐ、うまいっ! すごくうまいのじゃ!!」
「えへへ、美味しいねクリスちゃん。あっ、セイヤさん昨日は迷惑かけてごめんなさい……」
俺達は宿屋の部屋で朝ご飯を食べる。といってももう昼だ。帰ってきて少し仮眠を取ったら二人が起きた気配がした。
マックは冷めたが別に構わねえだろ。
「プリム、そういうときはありがとう、でいいんだよ。謝んな」
「は、はい! あ、ありがとうございます!」
ていうか、本当にまだ子供だよな。……プリムが14歳、クリスは女神年齢では30歳らしいが、パネルには人間年齢14歳って書いてあった。
……ていうか、俺の今の年齢は15歳か。
そう、パーティーを組んだら全員のパネルが見えるようになったんだ。
これはすごく重要な事だ。この帝都ではステータスの解析の研究はまだまだ道の分野だ。
それが数字で見れる事はすごい。
「のう、主よ。これからダンジョンに向かうのか?」
「いや、まずは準備だ。装備品と道具を買う。その後、冒険者免許を取って修練所で少しレベルを上げてからダンジョンに向かう」
冒険者免許は比較的簡単に取れる。ジョブ持ちでレベルが10もあれば十分だ。そして冒険者ギルドが管理している修練所で鍛錬をしてからダンジョンだ。
ダンジョンはここから近いモンゼンダンジョンがちょうどいいだろう。あそこのダンジョンボスはレベル20あれば倒せる。
クリスとプリムは目を輝かせていた。
「装備品! うわぁ楽しみだね!」
「うむ、戦女神は何がいいのじゃろ? ワクワクなのじゃ!」
二人の現在の所持品は着の身着だけで、プリムの武器は折れた剣だ。
よくこれで今まで生き残れたな……。
ん? プリムが明るい顔から暗い顔に変わった。
「あ、あの、セイヤさん、私達お金無いですし、その冒険者免許もお金かかりますし、ど、どうやって返せばいいかわからなくて……」
「そ、そうじゃ、我らはセイヤに頼ってばかりじゃ……」
そっか、与えられてばかりじゃ不安なんだよな。
しかし、本当にプリムはいい子だ。もちろんクリスも口は悪いが善良な性格をしている。
俺は二人の肩にドシンと手を置いた。
「重いだろ? 重いのは当然だ。いいか、俺はもうユウヤじゃない。セイヤだ。お前らの仲間だ。パーティーのモノは共有していいんだよ。これからダンジョンに行く。そしてお金を稼ぐ。そのお金で住む所や食事、装備を買う。パーティーで相談して決めるんだよ。金なんて後から付いてくる。俺達に一番必要なものは――信頼だ」
二人は顔を見合わせてコクリと頷く。
「絶対強くなります。私達の『パーティー』が帝都で最強になります」
「うむ、我は……後悔しないのじゃ。その、我は二人が好きじゃ。だから、その、頑張るのじゃ!」
なんだろうな、すごく懐かしい気分になった。片田舎にいた時のあいつらを思い出しちまったよ……。
……今度は違う。俺は、今度こそ……やり遂げるんだ。
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