パーティー結成


 プリムが落ち着くまで少し待って、今度はクリスに聞いてみた。


「うむ、我は天界に追い出されたのじゃ。……理由はあんまり覚えてないのじゃ。こんなにかわいい我を追い出すなんてアイツラは狂ってるのじゃ! ただ、最上位女神様に言われたのじゃ。天界に戻るためには『女神の雫』を取ってこいと。……女神の雫は闘技場チャンピオンにならなければ得られないのじゃ」


「え? あれって何か効果あるアイテムなのか? 女神の雫の欠片なら闘技場の景品で結構貰えるぞ」


「バカモン! あれは女神にとって非常に重要なアイテムなのじゃ! あれが無いと力が発揮できないのじゃ……」


「そういや、クリスってジョブ持ってるのか?」


「……今の我は一般人と同じなのじゃ。正直無理ゲーなのじゃ。我が率先して戦えず仲間を集めて闘技場でチャンピオンになることは……」


 俺はバッグをごそごそと漁る。無意味なアイテムだからバッグに放り込んでそのままだったのがあったはずだ。


「あったあった、これ女神の雫の欠片。いらねえアイテムだからみんな捨てるんだよな」


 俺はそれをクリスに手渡した。


「あ、ああ、ああっ」

「お、おい、大丈夫か!? 変な声出てんぞ!!」

「むぅ、こ、これをもらってもいいのか?」

「構わねえよ」


 クリスが女神の雫の欠片を手に包みこんだ。淡い光が発生して、その光がクリスの中に入り込む。

 なんだこりゃ?


「…………やはり欠片でも力が戻ったのじゃ。ほんの少しだけじゃが……。あ、ああ、ああっ!! ジョブなのじゃ!! ジョブを得られたのじゃ!!! 我は『戦女神』というものになったのじゃ!!!」


「ちょ、店の人に迷惑だから静かにな! ……戦女神? 戦乙女じゃなくて? 聞いた事ねえジョブだな。まあこの世界には凄まじい種類のジョブがあるからな」


「クリスちゃん、すごい! これでやっとパーティー組めるよ!」

「うむ、今まで荷物持ちしか出来なくて迷惑かけたのじゃ! これからは一緒に闘うのじゃ!」


 泣き止んだプリムもクリスと一緒になって喜んでいた。


「後は俺か……。で、結局俺って何で死ななかったんだ?」






 クリスの説明は非常に長く、要約できていなく、困難を極めるものであった。


 俺は女神の子という特性を持っているレアな人間だったらしい。

 これは生まれつきってよりも、女神と関わる何かがあった人間にしか得られない特性らしい。

 全然心当たりがない……。ガキの頃に何かしたのか?

 もしかして俺の呪いと関係あるのか?


「呪いとの関係はわからんのじゃ」


 というのがクリスの言葉だった。


 俺がウェアウルフに殺されそうになった時、クリスは俺が女神の子だってわかったらしい。クリスは自分の持っていた力を全て使って覚醒を促した。

 それで、俺は生まれ変わる事が出来たんだ。


 というわけで、以前の俺は死んだという事だろう。

 若返った理由はクリスに聞いてもわからないし、レベルが無くなった理由もわからない。

 さきほど、ジョブをゲットして女神を自称しているクリスでさえ、レベルというものがあった。


 俺だけレベルという概念が消えた……。


「ていうか、クリスは女神のくせにわからねえことだらけだな」


「むむむ、我はまだ子供じゃから天界で学んでいない事はたくさんあったのじゃ……。すまぬ」


「ん、いや、別にいいよ。これから三人で手探りで進めばいいんだろ? クリスと俺はパーティー組んだから、ほら、プリム」


「は、はい! あっ、パーティー申請……。あ、ありがとうございます!」

「うむ、これで我らはパーティーなのじゃ! パーティー名を決めなくては! 早く闘技場で戦いたいのじゃ!」


 ……せっかくやる気になっていると所悪いが……やることは山積みだ。


「闘技場の一番下のブロンズランクの最低条件は、ジョブ持ち、冒険者試験の合格者、かつダンジョンボス討伐者って決まってんだよ……」



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