状況確認お子様らんち


 帝都に戻った俺達は深夜までやっているカフェに入る事にした。

 席に着くとプリムとクリスのお腹が盛大に鳴った……。


「す、すいません……。その、あとで食事するので大丈夫です!」

「うむ、今日のご飯は水と芋なのじゃ2日ぶりのご飯なのじゃ」


 ……マジかよ。そういや、こいつらホームレスって言ってたもんな。


「……俺も腹減ったから適当に注文するから食べてくれ」


「そ、そ、そ、そんな、悪いです!」

「本当に良いのか? その、我らは金が無いのじゃ」


「子供は細かい事気にすんな。とりあえず今後の事を話そうぜ。おっ、姉ちゃん! お子様ランチあったよな? それが2つとドリアと、あとコーラを3つくれ!」


 二人は食事が来るまでそわそわして落ち着かなかった。本題を進めたかったが、飯が終わってからでいいか。料理が来るまで俺はパネルをチェックすることにした。


 ウェアウルフを倒せたという事は今の俺の強さは大体レベル20〜30の間って所か。

 生まれ持ったスキル『他者の強さを20%引き上げる』は健在だ。新しいジョブ『女神の騎士』のスキルはまだ使えない。



 ……そういや、なんか心の声が行ってたな。経験値がそのまま強さに変わるって。


 あいにく経験値という項目がない。

 だが、確かにあの時俺は強くなった。きっとコボルトを倒した経験値が俺を強くしたんだ。


 魔物を倒した時にステータスを注意して見てみよう。きっと数値が上がるはずだ。



「りょ、料理が来たのじゃ!! ふわわぁ……、すごいのじゃ。色が付いたご飯に旗が立ってるのじゃ……」

「うん、クリスちゃん、すごいね……。ほ、本当に食べていいんですか? あとで奴隷とかにされませんか?」


 きっと色々あったんだろうな。無性で親切するやつはこの帝都では少ない。何かしらの打算がある。


「なんもねえよ、どうせカジノで勝った金だし、命の恩人だからな。ほら、早く食えよ」


 俺がそう言うと二人はもしゃもしゃ食べ始めた。

 少し食べては感激の笑顔を浮かべ、二人で手を叩いたり、身体を震わせたり……、ああ、そっか、何かいいな、これ。

 嬉しそうにしている子供を見ると嬉しくなる。ていうか、こいつらってきっと良い奴らんだよな。


「もぐもぐ、お、美味しいのじゃ……。ひぐ、我は、天界を追い出されて……、地上での生活に慣れてなくて……ひぐ、温かいご飯なのじゃ……。この飲み物もシュワシュワ甘くて凄まじく美味しいのじゃ…。嬉しいのじゃ……」


「生きてくのが精一杯だったもんね……。あの家にいた時もこんなに美味しいご飯食べれなかったです……。あったかい、心があったかくなる。生まれて始めてこんな美味しい物食べました……。もぐもぐ、あちがとう、ございましゅ……」


 そういえば、こいつらも追い出されたって言ってたもんな。

 プリムの件は理解できる。貧乏貴族はいらない子を虐げて追い出す事がある。天界はよくわからねえが……。


 俺はゆっくりとコーラを飲みながら二人が食べ終わるまで見守る事にした――





「さて、お腹も膨れたし現状を確認するぞ。二人は闘技者になりたい。それであってるな?」


 お腹一杯になった二人は椅子を座り直し真剣な顔で俺を見つめる。

「うん」「そうなのじゃ」


 正直、闘技者になる事は戦いの道を選ぶ事だ。幼い子どもにそれを勧めるのはあんまりなんだよな……。


 プリムが手を上げた。


「あ、あの、自分のレベルが低いってわかってます。……私には姉がいます。その姉を超えるためには……闘技者にならないと……」


「ん、姉ちゃんは闘技者なのか?」


「はい、七大勇者ギルドのトップパーティー『烈火の焔』のリーダーのアルテミシアって言います」


 俺はコーラを吹き出しそうになった。七大ギルドにもランクがある。七大ギルド序列二番目の「焔の槍」というギルド、その中のトップ競技者である烈火の焔のアルテミシア。

 や、動画を見た事あるがあれば化け物だ。


 それを超えるって事は最上位闘技者になろうとしてるって事だぜ。


「それは――」

「姉を超えなければいけないんです」


 俺の見つめる瞳には強い意志を感じる。……重騎士か。闘技者には向いてないと言われるジョブ。主な就職先は帝国騎士や民間警備会社。速度が遅いのと状態異常抵抗値が低いのが欠点だ。


 無理、無謀か……。俺も村でそんな事言われていたんだよな。

 プリムに昔の自分を重ねわせる。


「まあいいだろう。ならちゃんと闘技者になるための申請しなきゃな」

「へ……、い、いいんですか? その、私重騎士で……」

「そんなもんどうにかするんだよ。俺も一緒に考えるから」


 真剣に俺を見つめていたプリムの瞳から涙が一筋流れた。

 嗚咽をこらえながらもプリムは泣きながら笑っていた。


「嬉しいのに、笑いたいのに涙が止まりま、せん……。ひっぐ……」


「別に泣いても構わねえよ」


 俺がそういうと、クリスがプリムをそっと抱きしめてあやすのであった。

              



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