第三章 私の答え⑫
どれくらいこうしているのだろうか。
あれから何度も飢えのせいで目が覚め、そして、また飢えのせいで私の意識は深いところに落ちていく。もう何度も太陽と月を見ている気もするし、まだ、一日しか経っていないようにも思えた。
私はベッドの上で、まるで死人のように横たわっていた。どろりと視線を動かすと、母が私の部屋に来たのであろう。血の入ったコップが窓際に置かれていた。
何も分からないが、ただ、苦しみだけが存在する時間を過ごす中で、私の身体で変わったことが一つだけある。私の嗅覚がとても鋭くなったのだ。それも一つの匂いにだけ。それは私の初めて愛した人間から漂ってくる匂い。
今や彼女がどこにいるのかさえ匂いで分かるようになった。それが自分の住んでいる土地だからか、余計に分かってしまう。神様とやらはとことん私を苦しめたいようだ。そんなことを考えると、また乾いた笑いが口から漏れ出した。
「……今日は……何日なんだろう……」
そう呟きながら視線をカレンダーに向けるが、時間の感覚が金曜日以降止まっているせいか、今が何曜日なのかも分からなければ、時間さえも分からなかった。
ただ、日曜日に大きく赤いペンで書かれた丸だけが不思議とひどく鮮やかに見えた。今日が日曜日なら、きっとバンドメンバーはみんな怒り心頭だろうな。大事なライブも近いのに連絡も入れないで何してるんだと怒られても仕方がない。
私は溜息を吐くと、また腹部を抱いて丸くなった。こうしている間も私のお腹は絶えず鳴り続けており、そして、飢えは私を苦しめ続けていた。
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