第25話

「じゃあ、明るい話題に変えましょう。親戚くんに告白はするの?」

「!」


 急に飛び込んできた話に動揺する。

 こ、告白…!


「まだ、そこまでは考えてなくて…」

「あら勿体無い。オッケーしてくれそうなものじゃない?」

「いやぁ…」


 思わず言い渋ってしまった私にカーラさんが詰め寄ってくる。


「どうしたの? まさか向こうから告白されたの!?」

「そ、そうじゃなくて…向こうは“家族”って思ってくれてるみたいで、私も同じような返事しちゃったっていうか…」


 あの時は告白みたいって自分で思ったけど、今考えたらなんとも…プロポーズのほうがマシなレベル。


「そんなこと言われたの…」

「はい…なので脈ないかなって」


 そんな残念そうは返しはしてくれてるんだけど、カーラさんは何故か口元を押さえている。泣きそうなのか笑いそうなのか、どっちなんだろう。


「でもね楓ちゃん」


 すっとカーラさんは表情を戻す。


「アタシ的には脈ありだと思うのよ」

「そうですか…?」

「絶対そうよ〜。男はね、どうでもいい女をあんなに大事にしないのよ」

「大事なんて、そんな…」

「前に言ってたでしょう? 彼といると距離感があって心地いいって。彼はきっと楓ちゃんのことを考えて近寄りづらいのかもしれないわ」

「どうだろ。私みたいに人付き合い苦手なのかもしれないし」

「いいえ違う。ウチの弟なんて酷いものよ、小言はうるさいし、自分の部屋汚いのに共有スペース汚いの嫌がるのよね。変なやつだわ」


 急な口に乾いた笑顔で誤魔化す。


「あはは…弟さんだからじゃないですか?」

「ま…まぁそれはあると思うけどね」


 若干カーラさんの目が泳いだ。何を思い当たったんだろう。


「とにかくね、親戚くんの距離感は外から見ててあれは楓ちゃんを『お姫様』だと思ってるに違いないと見たわ」

「おっ…おひめさま」


 一瞬頭が真っ白になった。お姫様なんてそんな、絵本じゃないんだから。


「じゃなきゃあんなにそばにいないもの」

「そうでもないですよ…?」


 いつも歩く時私が意識的に感覚あけてるし。


「そんな感じしないけど…まさか向こうが詰めてるんじゃない!?」

「どうだろ…あーでも、少し前から少し近いような」


 言われてみれば、って程度だけど…それも変化なのかな。


「でも最近気まずいしなぁ…」


 そこなのだ、結局最初の話題に立ち返る。

 私が顔合わせるの意識しちゃって避けているのだから。向こうは完全に私に合わせて距離作ってくれてる感じがするし。


「じゃあ、少しずつ距離を戻していったらどう?」

「それがうまくいかなくて…どうにも、相手の顔が見れないんです」

「なにそれ『青春ー!』って感じ。お姉さんときめきそう!」

「茶化さないでくださいよぉ!」

「本気よ〜!」


 なんて笑い合う。

 瑠衣とはまた違った距離感が楽しい。


「あぁでもね。正直このままでもいいような気はするのよ」

「そうですか…?」

「多分、待ってれば向こうが勝手にじれったくなって急に言ってくるだろうから」

「えぇ、なんでわかるんですか!?」

「そういう子…だと思うわ! 観察してると!」

「観察…?」

「若い二人の恋が気になって仕方ないの」

「や、やめてくださいよ。まだ、そんなんじゃ…」


 顔が熱くなってきた。

 ケイオスと両思い…そんなことあるかな…?

 そうだと嬉しいけど、自信とかないよ。


「まぁまぁ、自信もっていいと思うわ!」

「自信はないです…」


 やっぱり流石に自信は無理そう。

 だけど、言われた通りだといいのになぁ、とは思ってしまう。

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