第14話
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「せっかくだからアイスティー作りますね」
来訪した客人には一度食卓で待ってもらい、台所にある電子ケトルでお湯を沸かし始めた。
その間にポットと紅茶のティーバッグを三つ用意してグラスを一度冷凍庫へ。
お湯が沸いたらポットに注いで紅茶を抽出していって、その間にコップを冷凍庫から出して氷を入れておく。ここでのポイントは氷を入れたらマドラーとかでぐるぐる回してコップをより冷やしておくこと。溶けた氷から出た水分は捨ててしまうことを忘れずに。
そうこうしていれば紅茶も濃く出来上がっている。それをコップに注いだら完成。
食卓に持っていくと客人であるカーラさんがお土産を机に出して待ってくれていた。
「お待たせしました」
「大丈夫よ〜、むしろ丁寧にありがとね」
「いえ、せっかくのお菓子ですから」
カーラさんは昨日大きな街に行ったそうで、その街にある洋菓子屋さんでサブレを買ってきてくれた。一緒に食べないかと誘ってくれたのでそれなら紅茶を淹れようとなって今に至る。
「ごめんなさいね、急に押しかけたりして」
「いえ、今日は同居人も出かけているので気にしないでください」
今日、ケイオスは仕事だ。決まった曜日に出かけるわけじゃないけど、予定が決まったらすぐに伝えてくれるので今のところ困ってはいない。
「あぁ、親戚の子だっけ? イケメンよねぇ〜」
「あはは…」
実際のところ親戚ではない…けどイケメンなのはわかる。ケイオスってびっくりするくらい綺麗な顔してるんだよね。
「どう? 恋とか芽生えそう?」
「ぶほっ」
急な一言に若干お茶吹いた。
こ、恋!?
「こいって…恋ですか!?」
恋なんて考えたこともないよ!
「あら? 違うの?」
「な、なななんで急にそんな」
慌てる私にカーラさんはにこにこと微笑んでいる。
「いいじゃない、恋しちゃえば。誰かのことを考えて一喜一憂するのは良いことよ」
「で、でもケイオスとなんて、そんな」
確かに綺麗な顔してるけど!
と、年下となんて考えたこともないし!
下手なことを口走らないようにお菓子を口に頬張る。カーラさんはその様を楽しむように温かい視線を送ってくるし、これは本気の話とかじゃなくて揶揄われてるに違いない…!
でも確かに心のどこかで、誰かを考えて一喜一憂するなんて久しくしてないな…とは、思った。
「何か嫌な理由でもあるの?」
「嫌っていうか…弟みたいなものですから!」
「弟!? あはははははっ!」
私の口から飛び出した言葉にカーラさんはお腹を抱えて笑い始めた。まるでツボに入るようなお笑いネタでもみてるように、困る私を置いたまま呼吸に困るほど笑い続けている。
「はー…あー笑った。そっか、“弟”かぁ」
「…?」
「いいのいいの、気にしないで。この間マンションの下で見かけた時、随分仲が良く見えたから」
「私とケイオスはそんな仲じゃないですよ…」
口からはそう出たけど、どこか言いたいことをちゃんと伝えきれてないような…そんな違和感が胸に残った。なにか、言いたいこととは違う気がする。
「そっか。あぁでも、一緒に居るの辛かったり喧嘩したら言ってね? うちはいつでも歓迎だから」
「あ、ありがとうございます…」
喧嘩か…そういえばここまでしたことないな。一緒に住んでるんだからいつかは起きるかもしれないけど。
「…でもそうだな。ケイオスはいつも私を少し遠くから見てくれているから、今の所嫌って思ったことはないです」
「遠くから見てるって、どういうこと?」
「そのままの意味っていうか…ケイオスはいつも私に一線引いてくれているから、楽、みたいな」
あぁ、こんなこと言いたくないな。こう言う以外に思いつかないけど、都合よく見てるみたいな、そんな感じがする。
「本当にそれだけ?」
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