第4話
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お風呂から上がって身支度をしたら一先ず晩ごはんの支度をする。ありものなので大した何かがあるわけじゃないけど…。
ソファで寛いでるケイオスさんに声をかけて、二人で食卓につく時に箸が使えるか確認したら予想外にも使えるとのことで…未使用の予備を渡したらまたお礼を言われた。
いただきます、と挨拶をして食事は始まる。また意外だったのは“いただきます”を知っていたこと。彼の来歴みたいなものが気になって、つい声をかけた。
「あの」
「どうした?」
「…ここにくる前はどこに居たんですか?」
私の問いにケイオスさんはどうしたものか、と言う感じで悩み始める。何か言い難いことを訊いてしまったのかな?
「あちこちを転々としている生活でどことは言えないんだ。日本に来たのも仕事の都合で…それなのに事情が色々と変わって住んでいた所が使えなくなってしまって」
「そうだったんですか…大変だったんですね…」
「まぁ、流石に少しな。拾ってもらえて助かった」
そこで少し沈黙。
まずいな、普段一人で食べてることも少なくないから話題みたいなものがない。これは困ってしまった。
「あの…」
と、今度は向かいの席から聞こえる。ケイオスさんは申し訳なさそうに私を見ていた。
「その…貴女が良ければなんだが」
「?」
「もっとフランクに接してくれないか。あまり丁寧な扱いというものに慣れていなくてなんというかその…むず痒いというか」
「はぁ…良いんですか?」
なんとも間の抜けた返事を返してしまった。
正直私としてもそうできるなら助かるけど…いくら男性が苦手と言ってもこれから二人で生活するとなるとこの距離は接しづらい。
「むしろそれが助かる。俺の態度もこの通りだからな」
「じゃあ、えと…わかった」
「あと名前も呼び捨てでいい。俺もそうしたいが構わないだろうか?」
「呼び捨て!?」
あからさまに驚いてしまったのでケイオスさ…ケイオスも少し表情が曇る。
「嫌なら無理にとは言わないが…」
「ううん! 嫌じゃないの…ただ慣れなくて」
身の回りの人もあまり呼び捨てにはしないから、少し驚いてしまった。思い返してみると友達も両親も呼び捨てにはしない。
「だから気にせず呼び捨てにしてくれていいよ」
「そうか…なら楓と呼ばせてもらおう」
「うん、ケイオス」
呼び方や話し方が少し変わっただけなのに、どこか距離が近くなった気がした。いつまで彼がここにいるかはわからないけど、距離があるよりはいい、と思う。
その後は他愛もないような話をして食事を終えた。ケイオスを使ってないお父さんの部屋に案内してそこで寝るようお願いして、私も自分の部屋で床につく。
今日は遠慮しちゃってあれこれ訊きたいことも訊きそびれたから、明日瑠衣が来たらわかるといいな、なんて急にお気楽かも。
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