本編
本編
回転寿司屋に入る。いつもより、少し肌寒いように思う。
どこか違和感を覚えながら、あなたは案内された席に座り、注文をしようとすると……。
男の声。
おい、まさか最初からマグロやサーモンを頼もうってんじゃないだろうな。
寿司ってもんには食うべき順番があんだよ。
あん、俺が誰かって? 寿司を食う奴が俺のことを知らねえとはお笑いだぜ。
俺は寿司を作った男だ。
ただの寿司職人じゃねえぜ。
日本で最初の寿司職人よ。
今はこうして誰かに取り憑いて、寿司を食うのが楽しみってわけだ。
いいか。俺が憑いたからには、好き勝手食わせねえぜ。
まずは、お前が二番目に好きな寿司を食え。
そうだ。次は今日のおすすめを頼め。
次はお前が名前は知ってるが一度も食べたことないネタを頼め。
どうだ。腹がいっぱいになってきたか?
まだ、行けるなら、次はいちばん高いネタを頼め。
そうは言っても無駄にでかいやつとか、変わり種じゃねえぞ。
大トロとか、ウニとかそういうのだ。
大トロは昔の職人だったら捨ててた、赤身の方が高級品とかいうけどよ。
それは、昔は大トロをうまく食う技術がなかっただけだ。
気にせず食え。
また、寿司が食いたくなったら、俺を呼べよ。
しかし、もしかしたら、もう二度と食べたくならないかもな。
え、なぜって。あのよ、霊感っつーのは一度憑かれると、どんどん強くなっちまうもんなんだよ。
ほら、見えてこねえか。回っている寿司たちの上に、お前を憎らしそうに見てる魚たちの亡霊がよ。
あん? 赤身の上に全然知らない魚が見える?
マグロじゃないのかって。
おっと、そっから先は言わねえ方がいいぜ。
これからも寿司を楽しみたいならな。
ほら、じゃあな。
おあいそ。
怪転寿司 平賀ウエディング @sarudoshiaiai
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