第二話 歯車が回りだしたら他の歯車も回る

 夕日の色が赤紫色になり月が見え始める時間帯に蓮はHR教室で目を覚ました。そしてそのタイミングで蓮のHR担任の田中先生が教室の扉を開けて入って来た。


「お!蓮か。まだいたのか。そろそろ教室の鍵を閉めるから早く帰れよ。」

「……なぁ、田中っち。なんで俺教室にいるんだっけ?」

「なんだ、自習してんじゃないのか?ノートに涎の跡があるけどな。」


 田中先生が指をさした方向を見ると確かに蓮が寝ていた机に教科書とノートが開いて置かれており、涎の跡がある。いつもは宿題ギリギリで解いているのに今日に限っては宿題を全て終わらせいる。全く解いた記憶はないが。


「とりあえずさっさと帰りな~。」

「は~い。」


 蓮は鞄に荷物を詰め込み校舎をでた。


 今日はなんか、こう、あれ何してたっけ?まぁいっか!


 下校途中の蓮はなにか胸に引っかかるモヤモヤを抱えていた気がした、いやしていない、あれなんだっけ。

 小陽の記憶消去魔法が正しく(文章にも)発動されているのだ。


 さぁてこのまま大人しく家に帰るか、期間限定ドーナツを食べるか、どうしようか。迷うな。


 ほぼ期間限定ドーナツを食べようとする顔つきになり上の空になっていたのが蓮の運命の分岐点になった。もし蓮が上の空でなければ、街一帯を取り巻く嫌な空気を感じ取りすぐに家に帰宅しようとしただろう。そして嫌な空気の発生源が蓮に近づいてきた。


「すまない。尋ねたいことがあるのだが。」

「はい?」


 蓮は後ろを振り向くと優しそうなお爺さんがいた。蓮の反応が遅れたのは腰が曲がっており杖を突きながら歩いているため、蓮の視界に映らなかったからだ。


「お前さんはただの高校生か?魔書管理の者か?それとも」

「高校生です。」 (不審者だ。)


 あやうく内心の言葉と口に出す言葉を逆にするところだった。危ない、危ない。ってか怪しい宗教か、マルチ商法の勧誘か?高校生相手にやめてくれよ。


 蓮は内心毒づきながら、すぐに重心をお爺さんがいる方向とは反対側に移動し、逃げ出そうと判断した瞬間だった。


「そうか、そうか。噓つきは大嫌いだな。」

 は!? ガキン!!!


 不審者の言葉と金属音がしたのは同時だった。


 まず不審者が俺に向かって何かを発射したのはわかる。不審者の手が俺に向かって腕を掴むように開かれているから。んで問題は俺と不審者の間にまるで魔女のような姿をした不審者が新たにもう一人現れたことだ。


「誰だ、嘘つきの下僕か!?」

「不審者が増えた!?」


「「下僕でも不審者でもなぁ~~~~い。」」


 女の子の声が街中に響き渡ったのと同時に魔女の不審者の足元が光り輝いた。すると、蓮と魔女の不審者の姿がお爺さんの前から消えた。


「……っち。下僕であっているじゃないか。嘘つきめが。」

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魔法図書室と生徒。 宇佐見 恒木 @Matsuki4429

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