突然は不意におこるから突然

「おい、小陽。それなら彼は新入委員となるのが決まり。ここを案内してあげなさい。」

 

 梟が喋った。木製の梟が喋った。目をパチクリと瞬きしながら喋った。筋肉など伸縮する素材が一切ないのにスムーズに喋った。


 これらの事実が蓮の脳の処理が限界を超え、ショートし気絶した。


「あ、フウちゃん、喋っちゃダメだって。私が説明してからだって、」

「別に儂が喋っても構わないだろ。これで何回め……。」

「あぁもう、それは言わない約束でしょ。もう頑固なんだから。」

「儂が頑固なら、小陽も相当な頑固者だろうに。ところで彼倒れているが放置したままでいいのか?」

「あれ本当じゃん!!ちょ、えっと、とりあえず。」


 小陽が慌てている声を聴きながら、梟はヤレヤレと首を回転したのであった。




「あ、起きた?」


 蓮が目を開けると現実の旧図書室にいた。魔法とは縁が遠いどころか全くない、いたってどこにでもある旧図書室だ。木製の梟がいなければ、ランタンもない。


 旧図書室は壁に本棚が打ち付けられ、中央に長机が一つ、椅子が六つある。

 蓮は椅子をベッドのように三つ繋げられた上に横わたっていた。


「…ぁ小陽さん?あれ俺は?」

 蓮は体を起こすと再々魔法図書室ではなく旧図書室にいることを確認すると肩の力を抜いた。魔法図書室のインパクトが大きすぎて現実感がまだないのだ。


「よかったぁ。体痛いところない?大丈夫?」

「はい。ないけど、一つ質問いいですか?」


 蓮は小陽の目をジッと見つめた。それは小陽の向こうにある本棚までみえてしまいそうになる厳しいものだった。


「いいよ。あーでも、そのですます口調はいらないよ。」


 小陽はそんな重い空気を軽くしようとしたのかいたずらっ子がよくするニンマリとした表情で言った。


「小陽さん」

「あ、『さん』付けも、ね。」

「…あの魔法図書室って何ですか?んであの喋る梟は何?」

「フウちゃんは魔法図書室を管理しているゴーレムで、まぁ顧問みたいなもんかな。」

「新入委員って話はどういうことですか!?俺あんな怪しさ全開の所にいたくないんですけど。」

「そ・れ・は!魔書管理委員会は慢性的な人手不足だから。」

「魔書管理委員会って何ですか!!!」「魔書を管理する委員会だよ!」

「名前に助詞を付けただけじゃないか!!!真面目に答えてください!」

「ぇぇ、この問答を10回以上もやっているんだよ……さすがに飽きてくるって、」

「は?それはどういう……」


 蓮は矢継ぎ早に質問することで理解できないことを理解しようとしてみるが、小陽の方は目線を合わせるどころか段々とやる気を失っている。

 そのことに蓮はイラつき、頭に血が上り、思わず机に台パンをしようとした瞬間にに気付いた。

 

 


「んーやっぱりかぁ。はずなのになぁ。身体に染み付いちゃったかな?」


 は!?今なn 


 そこで蓮の意識はなくなった。

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