第6話 それは宇宙の意思である

それは悲劇だった。

ブリザードマンの引き起こしたブリザードは、彼にとって世界一大事な恋人・マリオジッチを数万キロ彼方まで吹き飛ばしてしまったのである。


先週末、マリオジッチはチョコザップに入会し、わずか数日で十キロの減量に成功したわけだが、そのテキメン効果が仇となったわけである。


虹鱒太郎は自業自得の顛末に泣きわめく我が子を見て、窒息しそうな勢いで笑い転げた。そう、虹鱒太郎は感情を隠さない男である。


「親父、一緒にフィアンセを探しに行こうぜ」

ブリザードマンが何度呼びかけても、依然笑いの発作にとらわれっぱなしの虹鱒太郎の耳には届いていない様子だった。


ブリザードマンは胸にたぎる焦げついた苛立ちをぐっと抑える。感情的になったところで新たな後悔を増やすだけである。


「息子よ。お前のフィアンセ、あれを辿っていけば見つけられんじゃね?」

ようやく発作のおさまった虹鱒太郎が指さした先に転がっていたのはミカンの皮の切れ端。マリオジッチの頭に乗っかってたやつだ。

「きっと俺に自分の居場所を伝えようと手がかりを残していったんだ!」


そういうわけで親子二人、マリオジッチ捜索の旅に出てはや二週間がすぎた。


二人はデベソ山脈の最高峰、ボエウィーツ山にて、ついにフィアンセを発見した。マリオジッチは山頂のフック状にとんがった岩の先端に服が引っかかって吊り下がり、ずっと身動きとれずにいたのであった。


幸い、そこらへんに住んでいる鳥さんたちと仲良くなれたおかげで、鳥さんが運んでくる果物や木の実のおかげで今日まで生きながらえることができたそうである。「そんなことより早くここから降ろしてちょーだい。大地が恋しいワイ」マリオジッチは生存の秘密を説明し終えると、呑気に自分を見上げているボンクラ親子に呼びかけた。











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