お通夜

 道下武雄が娘の綾花の通夜でいない今、権田始にできる事は現行犯で逮捕された春日野大也に多田寿士殺害の他に、別で犯したと思われる道下綾花殺害の証拠を発見し、罪を償わせることだろう。

「何か見つかりましたか。」

「いえ、現場からみるに春日野大也は異常者だったとしか。」

「と、言いますと。」

「浴槽からルミノール反応がでたため、風呂で遺体を解体したと思われるのですが…。」

「ですが、とは。」

「春日野大也の体毛がカミソリに付着していたり、シンクには春日野が食べたと思われるタッパーが、布団には春日野が寝ていた形跡が確認されています。」

「つまり、春日野はここで遺体を解体した場所で一泊したということですか。」

 鑑識は大きく開いた目をマスク越しの顔に表し、縦にうなずく。

「他には何かありませんでしたか。」

 始がそう話すと、うなずいていた鑑識は思い出したかの様に喋りだし、あるものを始の目の前にだす。

「そういえば、こんなものが。」

「これは何かのプ…ラスチックですか。」

「いえ、春日野が所持していたスマホのSIMカードです。折れたり傷つけられたりして分かりにくいですよね。他にも原型をとどめていないスマホもありますよ。見ますか。」

「いや、一旦情報をまとめたい。」

 そういうと始はメモに解っていることや疑問を書き始める。


・綾花さん殺害時の目撃者を口封じ→多田寿士さん殺害

・自身のスマホを破壊→何か知られては困ることある?→他にも共犯者がいる?

・共犯者がいたとしたら、どのような人物→綾花さんに怨恨を持つ人物、窃盗仲間?


 まだ、情報が少ないな。スカスカのメモ帳からはそう感じられる。

「…田さ…、…権田…ん、権田さん。聞いてます?」

 話しかけたのは後輩刑事の里山さとやまだった。

「んぁ、いやごめんごめん。ところで何だ。」

「いや、春日野のが身元を偽り潜伏していた職場の場所がわかったので報告を。」

「本当か、すぐ向かう。場所は。」

「ここで言うより、向かいながら教えた方が早いですよ。」

「じゃあ、里山。お前もついてこい。」

「了解っす。」

 そういうと二人は車に乗り込み、目的の場所へと向かう。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る