第3話 連戦

「オーガか……ラッキーだったな」


 俺の目の前にいる魔物は、全身が濃密な筋肉で形成され、その肉体を強固な赤黒い皮膚で覆った、この森にいる魔物の中でも上位に位置する強者だ。街の冒険者で、この皮膚と肉体を突破出来るものは少ない。

 まあ俺からしたら簡単に倒せる相手で素材もかなり高値で買取って貰えるからコスパがいい魔物なんだがな。


「俺の金になってくれよ」


『グォォ!!』


「おー、お金になってくれるか。それはありがたいな」


 オーガは地面を蹴り、俺との距離を一気に詰めてきた。普通の人間ではその風圧だけで吹き飛ばされそうな速度だが、俺ほどの動体視力があれば歩いているのとそう変わらないので簡単に動きを見切ることが出来る。


「遅いなぁ……距離を詰めるなら縮地くらい使わないと簡単に見切れちまうぞ」


 縮地とは、踏切の瞬間に足の裏へと魔力を流して筋肉を活性化させることで、最初の一歩がかなり速くなる技術のことだ。ちなみに活性化させるにはかなり魔力を消費するので全身に纏わせたり、長時間やるのは技術的には可能でも現実的には不可能に近い。まあ俺は魔力量がかなり多いから、動く時には毎回縮地を使っているがな。


 距離を詰めてきたオーガは金棒を振り下ろしてきた。振り下ろす速度も一般人からしたら脅威的なんだろうが、俺からしたら全くもって脅威にならない攻撃だ。

 俺は縮地を使って金棒を振り下ろしてきたオーガの背後に回った。オーガの動体視力では、俺の縮地を見切ることは出来ないため、オーガ目線からしたら俺が瞬間移動したように見えるだろうな。


「今回は急いでるから、すぐに終わらせてやる」


 いつもだったらもう少しおちょくってから倒すんだが、今日は出来るだけお金を貯める必要があるから一撃で命を刈り取ることにした。

 背後に回った俺は背中から肋骨の隙間から心臓を狙い突き刺した。人に比べてかなり大きいオーガは肋骨の隙間が人より大きいから、構造を知っている人間なら簡単に狙うことが出来る。まあ構造を知っていたところで、オーガの筋肉を貫くことが出来る武器と技量がないと不可能なんだがな。


『グォォ!』


「あー、耳鳴りがすごい。いつも思うがオーガの断末魔はどうしたら防げるんだろう。昔耳栓を試してみたが、見事に貫通してきやがったからな……口を塞いで始末するしかないのか?」


『ぐぎゃ』


「断末魔に引き寄せられたのか。だが珍しいなゴブリンが1匹で森の中にいるなんて」


 このゴブリンという魔物は人間の子供くらいのサイズで力も大人くらいしか無いため弱い魔物だと言われているんだが、俺はそうとは思わない。この魔物は知能が他の魔物に比べてかなり高く、狡猾的で油断のできない相手だ。特に森の中で群れと出会った場合、何匹いるかの把握が難しく、歴戦の猛者でも伏兵のゴブリンに弓で貫かれるという事件が何度か起きているほどゴブリンは油断の出来ない相手だ。

 ただゴブリンの武器は弱く全身鎧などを装備しておけば負けることは無い。まあ森の中で全身鎧など自殺行為だから来ていやつなんて見たことない。


「……いや、お前はレッドキャップか」


 遠くから見たらゴブリンという姿形が似ているため勘違いしたが、こいつは単独でもオーガといい勝負が出来る強い魔物だ。

 レッドキャップは長い髪に赤い目、突き出た犬歯に鋭い鉤爪、そしてトレードマークの赤い帽子を被った魔物だ。


「ぐぎゃ」


「やっぱり速いな」


 オーガとは比較出来ないほどの速度で距離を詰めてきたレッドキャップは俺の目を狙って鉤爪を振り上げてきた。やっぱりこいつは狡猾だな。戦闘で1番大事な視力を奪おうとしてくる。


「だけど剣だけじゃなくて蹴りも警戒しないと勝てないぞ」


 隙だらけのレッドキャップの胸を蹴りあげた。体重が軽いレッドキャップは吹き飛んで行った。木にぶつかってやっと止まったレッドキャップの胸へと剣を突き刺した。

 心臓を貫かれたレッドキャップは絶命した。


「……次から次へと今日は豊作だな」


 次に俺の目の前に現れたのはグリフォンとその上に乗っている魔族だった。


「これは少々厄介だ」


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