第8話 鬼と節分

 節分である。

 鬼が家から追い出される日なのである。鬼達はひいらぎと鰯の頭、そして豆という恐ろしい兵器に駆逐され、家から出されてしまうのだ。

 尤も、鬼という物も人類には必要な物なのである。その為3日程したら帰って来るのではあるが。その3日位は鬼のがまんのしどころだ。

「おう、お前も出されたのかよ?寒くね?」

「その寒い中なんでパン一なんだよ?」

「それはお前もだろ?でも鬼の防寒着って見たこと無いだろ?」

「まあな。鬼の見た目って虎柄パンツ一枚よな」

「おいおい、金棒忘れてるよ」

「あ!だからお前金棒持ってんの?邪魔じゃね?」

「いや、お前イメージ大事にしろよ。鬼ってこうだろ?」

「いやまあそうだけどさぁ」


 夜の繁華街の裏道。とりあえず節分で追い出された鬼達は退屈と寒さしのぎにとりあえず笑い話に華を咲かせる。

 それが人間ヒュームに聞こえているかどうかは別問題なのだ。

 追い出されてパンツ一枚。寒い寒いと言いながらも、実は毎年の事で慣れている。鬼達にとっては割と風物詩的な何かなのである。

 てなわけで人間ヒューム達よ。来年も楽しく節分しようではないか。君達にとっても外せない行事なのだろう?

 しかし人間も酷な事を考えたものだ。

 年の頃数だけ豆を食べようとか?

 若い子はもっと食べたがり、年寄りは胸焼けするであろうに。


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