第9話 婆さんの魔道具カメラ
「婆さんや、今日はどこで記念撮影しようかのう?」
爺さんがそう聞いて来るのはもはや日課になっている。結婚してしばらくして始まったその記念撮影は、そろそろ50年にも及ぶのだ。
「今日辺りここなんかどうでしょう?」
シンガポールのマーライオン像の側の画像が用意されている。
「じゃあ、そこにするか」
お爺さんが三脚にカメラをセットし、婆さんと並んでセルフタイマーで撮影する。
そこに予め背景になる画像をセットすると、そこで記念撮影したような画像が出来上がるのだ。
「うん。昭南島かあ。悪くないのう」
「お爺さん、最近はシンガポールと言うそうですよ」
「で?これライオンなのかの?まあ、ライオンなのか?」
「まあまあライオンなんじゃないですかね?ウフフ」
爺さんと婆さんのそんな素敵な思い出の記念撮影場所も随分増えたものだ。かつてはエッフェル塔、三大ピラミッドなどの有名な場所が多かったが、近頃はがっかり名所も増えてきた。
先日は高知県のはりまや橋、札幌時計台など。今日のマーライオンもそんながっかり名所の一つと言えよう。
ここら辺は行き尽くした感よりも、記念撮影疲れとこの程度も楽しいものと思えるようになってきた事が重要なのだ。
そして明日も楽しい記念撮影をするのだろう。
最近はネットから名所をすぐに拾えるのだから。
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