第3話 透明人間ドック

 近頃の人間ドックも発達したものだ。内臓の疾患を診るならいっそ中身が見えた方が早い。

 その為まずは最後の内臓検査では身体を透明にして、その後牛乳を流し込むのである。

 牛乳の入り込み方で内臓の色々な事が分かるのである。

「62番の木下さんは今すぐ入院ね。あの方小腸に癌が有りますから」

 牛乳がそこら辺で癌細胞の形に入らなくなるのだ。

「72番の吉田さんの憩室けいしつは、異常に大きいけど、有って害は無さそうですかね?異常無しと」

「吉田さん自身の人柄と資質って有るよね」

「でもこの人はダメだね。消化早すぎですよ」

 この内臓の疾患が何よりも早く判る透明人間システムねさでは有るが、飲食物非透過に加え、消化が早すぎる人のそれに当たると、内臓の牛乳がみるみる茶色に染まって行く。

 牛乳が消化が速すぎて、早くも出て来そうになっているのだ。

 こうなると中身が丸見えなだけに汚ならしい。

 この消化の速さには医者も辟易だ。すぐにもう見えているのである。

「うわー。川島さん、行きたいなら行っても良いですよ早く帰って来てー」

 消化が早すぎる川島さんが『はーい』と言って走り出す。

 内臓検査の透明人間システム。これはまだまだ見所と灰汁の強い人向けには出来てはいない。そんなシステムなのであるが、医療の現場はまた一つ進歩したのである




 

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