第11話

 テーブルに置いていた携帯が震えた。

 由美はびくっと体を震わせ、携帯を手にした。


 信一郎からだった。

「もしもし」

「由美?」


「うん」

「今夜、大丈夫か?」


「うん、大丈夫。昨日帰ってきたから、今日は帰ってこないと思う」

 明のことだ。


 明は仕事が忙しく、三日に一日帰ってくればいいほうだった。

 二日続けて帰宅したことは、この一年なかった。


「じゃあ、あとで」

「うん、あとで」


 信一郎が電話を切り、由美も携帯を持っていた手をだらりと下ろした。

 荷物は既にまとめていた。


 少し掃除していこう。

 明に申し訳ないと思う、由美のせめての罪滅ぼしだった。

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