第10話

 仙台に戻った信一郎は損害保険の営業をはじめたそうだ。

 そして、そこの営業所の事務員である女と結婚をした。


 妻の名前は麻美というらしい。


 信一郎の仕事はうまくいかず、麻美の父のすすめで、麻美の実家である横浜のコンビニを手伝うことにしたそうだ。


 十年経てば、当たり前だが人は変わる。

 年より子供っぽかった信一郎は、実際の年齢より五つは年嵩に見えるほどに老け込んでいた。


 その姿を見たとき由美は思った。

 良かった、と。


 信一郎が活き活きと若々しくしていたら、由美は落胆しただろう。


 幸せでいてほしいとは、一度も考えたことはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る