第4話
信一郎と再会した。半年前のことだ。
デジタル系の専門学校でWEBページの制作について学んだ由美は、学校を二十歳で卒業すると、小さなデザイン会社に就職した。
そして、その会社でクライアント企業のHP制作を担当した。
仕事はきつかった。激務だと言っていいと思う。その証拠に由美は体調を壊した。
働いていた最後の年は、規則正しかった生理が、妊娠もしていないのに、年に五回しかこなかった。
由美は五年間勤めた会社を退職した。
「ちょっとゆっくりしたら」
夫の明はそう言ってくれた。
明はほとんど家に帰ってこない。
同じ専門学校を卒業した明は、WEBまわりのコンサルティングを請負う会社に勤めており、由美と似たような仕事をしていた。
勤務状況も似たようなものだ。
自分は激務に耐えながらも、由美の体を気づかった明は、由美に退職を強くすすめた。
「こんな仕事してたら、赤ちゃん産めなくなっちゃうよ」
明がそう言うたびに、由美は少し困ったように微笑んだ。
そんな由美を見て、明は言う。
「由美は赤ちゃん、ほしくないの?」
「ほしいよ」
「だったらあんな仕事辞めたほうがいいよ」
「そうだね」
そう言って仕事を辞めた由美だが、何もせずに家に居る生活は退屈だった。
家事に専念しても、時間、体力ともにもてあましてしまう。
もっと家事を極めればいいのかもしれないが、由美の意欲はその方向には向かわなかった。
かといって同じような仕事を再開するつもりはなかった。
明の言うとおり、あんな仕事をしてたら子供を産めなくなってしまう。
ただでさえ自分は分が悪い。
若い頃に中絶経験のある女は妊娠しずらいと聞いた。
そのせいか、まだ由美は妊娠していない。
時間をもてあまし、懐妊のプレッシャーに息苦しさを感じた由美はコンビニでバイトをはじめた。
そこに信一郎が居た。
高校を辞め、実家のある仙台に帰ったはずの信一郎が、そこに居た。
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