第30話 悪魔


「っはっ!アグっ!」

 気が付いたケビンだが腹をさするので、

「ヒール」

「あ、あぁ、俺は負けたのか」

 ケビンが項垂れているが、

「お前がなぜここにいる?盗賊からは足を洗ったのか?」

「あ?俺は…盗賊を追われて出て来た。本当は頭だったのにな」

「頭だったお前を蹴落としたのは誰だ?」

「ヒエラルって奴だ」

 詐欺師のヒエラルか、そうなると親玉は、トロンかよ。よりによってあいつがもう出て来てるとはな。

「分かった、で?あいつらの目的は?」

「隣の国シャハールが負けたのは知ってるだろ?そこを乗っ取ろうとしてるんだ」

「はぁ、そんなことか」

「そんなことじゃないだろ?あんな奴らに王が務まるか!」

「盗賊の癖によく喋るな」

「…お前が仲間になれと言ったからだ」

「そうか、分かった、ヒエラルを潰すぞ」

「…おう!」

「間違っても昔の仲間と思うなよ?」

「分かってる、でもあいつらは」

「騙されてるんだろ?だが、いまはやつらの正義は騙されてることだ」

 誰が何を言ってもヒエラルの口には敵わない。

「そ、そうだな。俺も腹を括る」

「お前は出なくて良いんだぞ?」

「いや、引導を渡すのは俺だ」

「そうか、強いな」

「は!これくらいしょうがねえ!」

 ならこの話はこれくらいにして、

「そこに隠れてる奴らは全員出てこい」

 ゾロゾロと出てくるのは全員かよ。

「しっかり聞いたわ!私の出番「お前の出番はない!」そんなぁ」

 エルなんか出したらそれこそ火の海だ。

「この件はそうだな、俺とケビン、後はガイアスとテリーで十分だな」

「は?四人で行くのか?相手は50はいるぞ!」

「負けそうか?」

「さぁ?リュウがそう言うなら負けないんじゃないか?」

「俺もそう思う」

「まじかよ」

 俺はコクピットに座り、

「ヒエラルの現在位置は?」

『南西に二キロほどのところです』

「ならそこに座標を合わせて発進」

「変更確認しました。発進します』

 なんだかなぁ。ヒエラルも使いづらさはあったけど仲間にしたかったがよりによってトロンはダメだ。あいつは悪の道と言うユニークを持ってるからな。悪魔だし。

『到着しました』

「分かった待機で」

『了解』


「ケビン動けるか?」

「もう着いたのか?」

「あぁ、テリーはその鎧はどうだ?」

 聖鎧ガイストスに着替えたテリーは体を動かしながら、

「バッチリだ!これなら誰も後ろに通さない!」

「ガイアスは?」

「この鋼鉄の胸当ては俺のために作ったのか?」

「あぁ、ガンツが二つ使って作り直したみたいだ」

「ありがたい。ナックルも手に馴染むな」

 よし、男四人で殴り込みだな。

 とその前に、

「兄貴もくるのか?」

「行っても良いのか?」

「しょうがないなぁ」

「よし!俺も力になるぜ!」

 ケビンの肩に手を置く。

 男五人か、ちょっと戦力過多だがまぁ良いか。


 下に降りると敵の砦のど真ん中だ。

 背中を守るように五人固まっている。

 いきなり出て来たのでびっくりして敵は動かない。

「おら、こいよ!」

 ケビンが挑発するが、敵は敵と思ってないみたいだ。

「しょうがないなぁ、これからはバラけるか?」

「それで構わない」

「兄貴もしっかりな!」

「誰に向かって言ってんだよ!」


「うわあああ敵襲だぁぁあ!」

「今頃遅いっての!」

 ケビンがダガーを振るう。

「俺は鉄壁!しかも強いぞ!」

 テリーは訳のわからないことを言いながら敵を圧倒している。

「おらぁぁ!」

 ガイアスは素手で人の頭を持って振り回している?それは武器じゃないぞ?

「おらぁぁ!」

 兄貴はさすがとしか言えないが凄いスピードで敵を倒して行ってる。


 俺は敵を斬りながら砦の中に入っていく。

「お、お前はなんだ!」

「ヒエラルか、トロンもいるな。出てこいよ悪魔トロン?」

「オ。オマエハオレヲシッテイルノガアァァァ」

「ひえっ!」

「聖剣の屑となれよ?」

 俺はスピードを出して脚を両断して頭から聖剣をブッ刺して倒す。

「オリハマダエゲデル」

「五月蝿い死ね!」

 両断して心臓を八つ裂きにすると灰になって消えた。

 コイン10枚かよ。しけてんなぁ。

「ひっ!」

「お前がやってたことをここで告白しろ!」

「は、はい!悪魔にだま「それは良いから!」ひ、人を生きたままこの壺の中に入れていました」


 やはりな。残念だよ。

「ひっ!」

“ゴト”と言う音がしてヒエラルは消えていく。

 消えるから罪悪感は薄れるな。

 悪魔に魅入られたやつは普通の死に方はできない。魂は食べられているからな。


 壺を壊すと中から異形の悪魔が出て来たが一瞬で八つ裂きにした。これが出来るのは聖剣と付与のお陰かな?

「おい!ヒエラルは?」

 ケビンが飛んでくるが、

「悪い、悪魔に乗っ取られてたから斬った」

「あ、あぁ、そうか、だから仲間も消えていくのか」

 悪魔の恐ろしいところは魂を食って気付かせないところだ。


「外はどうだ?」

「戦力がこれだけで良いっていってたろ?」

「なら終わったな」

「そーゆーことだ」


 外に出るとケビン、ガイアス、テリー、兄貴がコインを渡してくる。

「こんどはダンジョンに行きたいかな?」

「どんだけ戦いたいんだよ」

「生半可な戦いでなかなか不完全燃焼だ」

「ガイアスもか、俺もだ」

 俺も少し不完全燃焼だな。

「てかその前に料理人を仲間に入れるぞ」

「あ!それ大事!」

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