第29話 グラディエーター


 奴隷商につくとツンとした匂いがする。

 いい環境じゃないのだろう。

 ここにグラディエーターのガイアスがいるはずなんだが?

「はい!僕はここですよ?お客さん買ってくださいな!」

「?」

 なぜここにこいつがいるんだ?

 もうストーリーが始まってるのに…あぁ、そうか、国取り合戦が始まっているのか。

 彼女の名はコリー・アンサンブル。たぶん国が負けて奴隷に落とされたんだろう。類稀な魔力の持ち主で魔法合戦なら誰にも負けないはずだが、

「おや?コリーを買いたそうな人がいますね?」

 こいつは煉獄の魔女と言うユニークを持っているユニットだ。だがこんな性格だったか?

「コリーは安いですしその顔はタイプですから買ってもいいですよ?」

「あれはないと思いますよ?」

 ハンゾウが袖を引っ張る。

 面食らうなぁ、奴隷でポジティブなのは凄い。

「あー、後でな、コリー嬢」

「わかりました、ご主人様」

 それよりも、いたな!ここからでもわかる大男のガイアス。

「少しいいか?この男を買いたい」

「こ、これはこれはお客様、この男は凶暴でしてコロシアムに入れようと思っていたところなんですよ」

「ここに一億金貨あるが?」

「そ、それではどうぞ!こちらへ」

 奴属契約もしてガイアスを買う。

「あ、外にいたコリーだが」

「あ、あれもつけますとも、はい!」

 コリー嬢をあれ呼ばわりとはなかなか売れなかったのだろうな。

 ガイアスが手を挙げる。

「いいぞ喋って」

 奴属契約にもあったがこういう風にするとはな。

「俺は何をされてもいいがコリー嬢は優しくしてやってくれ」

「ふぅん。コリー嬢とは仲が良かったのか?」

「仲がいいわけじゃないが俺が守るべきはずの人だった」

 コイツは驚いた。すでにストーリーから外れているではないか!

 ストーリーではガイアスは街でゴロつきを殴り飛ばして奴隷落ちしたはずだが、今ではコリー嬢の守衛だったのか。

 あぁ、俺がシャインを救ったから周りがそれに合わせて変化してるのか。

「待たせたわね、ご主人様」

「コリー嬢、すまなかった」

「いいわよ!あんな国では私は収まらない!このご主人様は当たりよ!ガイアスもちゃんとお勤め果たしなさい」

「わかった、よろしくお願いします」

 鑑定、

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 コリー・(アンサンブル) 19歳

 レベル80 煉獄の魔女

 スキル 火魔法極 中級水魔法 中級風魔法 中級土魔法 中級雷魔法

 ユニーク  煉獄

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 ガイアス  25歳

 レベル75 グラディエーター

 スキル 咆哮 挑発 拳術極 中級盾術

 ユニーク  我慢

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ガイアスのユニーク我慢は我慢した分、倍返しにする特殊なユニークだ。

「よし、二人とも俺はリュウよろしくな」

「「はい、ご主人様」」

 んー、言い方はまた変えればいいか。

「それじゃ外に出るぞ」

「いいのか?女の子なんか買って」

「マジックキーは二つあるから問題ない」

「それならいいが」

 兄貴は心配することではない。

 全員集まってないがファーストシップに戻る。

「ちょっとだけ待ってなよ」

 マジックキーで奴属から解放すると、

「んー、良かったわねガイアス」

「ほ、ほんとうにいいんですか?」

「まぁ、俺らの仲間になってくれるんだろ?」

「もちろんよ!ご主人様!」

「それはよしてくれ、リュウでいい」

「わかったわ、リュウ」

「わかった、リ、リュウ」

 ガイアスは硬いがコリー嬢はフランクすぎないか?まぁいいか。


「この施設は好きなだけ使って良いからな」

「やっぱり!私の目に狂いはないわ!」

「コリー嬢、あまりフランク過ぎるのも?」

「大丈夫よ、リュウの心は広いもの」

「あぁ、大丈夫だよ、ガイアス」

 大男のガイアスがオロオロしてるのが面白い。

 他にもクセのあるメンバーが揃ってるからな。

「まぁ、他のメンバーとも仲良くしてくれよ」

「任せといて」

「うん、大丈夫」

 続々と帰還してくるメンバー。

 最後に帰ってこないのはサーシャとシャインか、どこほっつき歩いてんだ?


 下に降りて見に行くとシャインが戦っているのは俺が目をつけているユニットの盗賊のケビンか…なぜここに?

「シャイン!退け」

「いえ!退けません!ご主人様の悪口を言ってましたので!」

「あ?本当のことだろうが!女ばかり侍らせてるクソ坊ちゃんだろ?」

 ワーウルフ属のケビンが俺の方を見て挑発してくる。

「はぁ、しょうがないから受けて立つけど、負けたら仲間になれよ?」

「は?仲間になれだと?勝ってから言いな」

 スピード勝負がしたいのか早くも俺の懐に入って掌底をかましてくるが、見えているので首を捻り避けると、膝を腹に喰らわせる。それだけでケビンは泡を吹いて失神した。

 力加減はしたはずだがな?

「シャイン、サーシャ、帰るぞ」

 俺はケビンを引きずって踵を返すとシャイン達は笑いながら着いて来た。

 なんでケビンがここに?

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