第19話 姫騎士シャイン


「おーい、そろそろ飯だぞ!」

 料理はスキルを持ってるので俺が作る。

「飯だ!腹減った」

 テリーを先頭にみんな食堂に集まる。

「これなぁに?僕食べたことないや」

「んー、まぁ中華って感じのやつだな、好きなのから食べてくれ、辛いと思うから気をつけてな」

「「「「「いただきまーす」」」」」

「美味っ辛っ」

 テリーは麻婆豆腐を人掬いして口に頬張ると辛いのか不思議な踊りを踊り出す。

「あははは!そんなに辛くしてないぞ?」

「あはは、美味いぞこれ」

 イザナの口にはあったようだ。

「この袋の中身が美味いにゃ」

「それは餃子ってやつだ、タレにつけて食うんだ」

「僕はこれが気に入ったよ!シャクシャクして肉もジューシーだし」

 シャクシャク?あぁ、筍か、

「肉まんだな、それもいっぱい作ってあるからな」

「この細いのがいっぱいのやつは?」

「青椒肉絲だな。まぁ、美味いからくってみろよ」

「あ、美味しい」

「だろ?」

 料理のスキルのおかげだ。

「美味っ美味っ」

「にゃっ!にゃ!」

 凄い勢いで食べるテリーとモニカ。

 ゆっくり食べることを推奨したいな。

「まぁ、腹が膨れたらちょうど南の街サイフォンに到着する頃だろう」

「おう!んじゃ。もっと食っとかないとな」

「買い食い出来ないんじゃないか?」

「おっと、それはいかんな!でも腹も減るしやっぱり食べとく」

 テリーは欲望に忠実だな。


「ふぅ、満腹だぁ」

「にゃぁ」

 二人とも苦しそうで鎧を脱いでいる。

 

「あ、そうだ、モニカにに装備渡すの忘れてた」

 俺はマジックバックから天歩のブーツと妖精のグローブを渡すとそれをつけたモニカはファイティングポーズをとる。

「にゃっ!ちょっちゅにゃー!」

 あと妖精のタクトは精霊使いが使うものらしいのでメイアに渡しておく。


『目的地に到着しました』

「よし、カモフラージュして下降だ」

『保護色展開、下降します』


 街より一キロほど離れた場所に降りた俺たちは飛空挺に上昇して待機を命じ、夜霧の馬車に乗って街に入る。

 南の街サイフォンだ。

 ここは金がものを言う所なので俺たちも着替える。どこぞの王子と騎士、ならびに美女たちと言った具合かな?

「リュウが似合っててウケるにゃ」

「ここは鴨がネギ背負って歩いてる街だからな、十分注意してくれよ」

「「はい」」

「ならまずはなにをする?」

「そうだな、姫騎士シャインの情報収集を頼む」

「わかった」

 イザナは人に紛れて姿を消す。

「腹減って来た」

「もう少し我慢しろ!こんなことならおいて来てもよかったんだぞ?」

「我慢する」

「よし、じゃあ動こうか」


 姫騎士シャインのストーリーは王家が没落し、闘技場で選手として活躍する姫騎士だが、やりたくてやってるわけじゃなかった。

相手国に捕まり奴属の首輪をつけられて嫌々従うしかない。それをどう攻略するか。


 まだ捕まってそう長くは立っていないはずだ。ならまだ人気はないだろうな。そこで話す機会があるはずだ。


「おいお前!そこの女を俺に渡せ」

「は?誰に向かって口を聞いてるんだ?」

 冷たい声で言ってやるとその子供は一瞬引いてしまう。

「こちらでいかがでしょうか?」

 付き人が腰を低くしてやってくるが、

「俺は誰に対してものを言ってるんだと聞いている」

「ヒイィィィィ!」

「申し訳ございません!」

「申し訳ございませんでした!」

 横柄な態度なら神宮寺の頃を思い出せば訳ないこと。

「よかろう」

 お付きのものを後ろにつけて歩く、神宮寺の時はこれが常だったからな。

「それではいまから闘技場にいくとするか!」

 南の街サイフォンで中央に位置する場所にある闘技場、ここで人と人が命を賭けた戦いに観客は熱狂するのだ。今の俺には何が楽しいかわからないが、神宮寺の時には地下闘技場を経営していたこともあるのでそれが儲かることはわかる。


 闘技場の中に入ると姫騎士シャインと武道家ゴリムの試合が始まろうとしていたので有り金全部姫騎士シャインに賭けてやった。

「ほ、本当にこんなに賭けるんですか?」

「ダメか?」

「い、いえ、それではこれを」

「チッ!ただの木札か」

「申し訳ございません」

 これで勝てば4000万の16倍が返ってくる。6億4000万が俺の懐に入る。

「じゃあ見に行くか」

「本当に賭けて大丈夫か?」

「大丈夫だ」

 姫騎士シャインは連戦連勝の無敗の王者だからな。

 試合を見ていると武道家が推してるように見えるがシャインのサーベルが心臓を突き破り勝った。

 これで大金持ちだな。


「換金を頼む」

「し、し、少々お待ちを」

「なんだ?勝ったんだから早く用意せよ」

「べ、別室にてお渡しします」

 別室に連れて行かれる。どうもゴテゴテした装飾が気に入らないな。

「お待たせして申し訳ない、当闘技場の支配人をしておりますサガネと申します」

「そんなことは聞いていない。さっさと金を渡せば済むことだろう?」

「大変高額なもので少々お時間をいただいておりますのでこちらを是非お飲みになってお待ちください」

「ふん、早くしろよ」


 出された飲み物には手をつけない。毒が仕込んであるのが丸わかりだ。鑑定でも出ている。

「お飲みにならないんですか?」

「ハハッ、飲ませたいらしいな?飲んでみせろ?」

「い、いえ、お客様にとお出し「いいから飲め」…も、申し訳ございませんでした」

「俺は気が短くてな、お前の首が飛ぶかお前がこれを飲むか選ばせてやる」

「く、クソッ!申し訳ない!これには毒が入っておりますので飲むと死にます。どうか、どうか寛大な処置を」

「やはりな、なら姫騎士を連れてこい!俺のものにしてやる」

「なっ!なぜ!?いえ、それでしたらわかりました」

 支配人は姫騎士を連れ6億4000万もの金貨を持って来た。

「それでは奴隷契約を」

「わかった」

 シャインと契約をする。

「そしてこちらのお金は?」

「ハハッマジックバックも知らないのか?」

「ま、まさか、も、持ってるとは気がつきませんで」

 6億越えの金貨をバックに入れると姫騎士を連れ宿を取る。

「よし。これでオッケーだな」

「オッケー?なんだそれは」

「なんでもない、それよりシャイン」

「はい。ご主人様」

「これから契約を切るから俺と一緒に旅をしないか?」

「え?」

「晴れて自由の身になれるんだ、やりたいことはないか?」

「わ、私を闘技場に連れ込んだあの支配人を消してやりたいです」

「ほう、ならそろそろ準備しておかないとな、じゃあ、仲間になるでいいか?」

「はい!ご主人様がそれでよければお願いします」

 俺は昔出たマジックキーを取り出して首輪の鍵穴に刺して回すとカチッと言う音がして奴属の首輪は外れた。

 そしてマジックキーも粉々になった。

「それはマジックキー!そんな、あ、ありがとうございます」

「いや、シャインを救えて良かったよ、それからコレを装備してくれるか?」

 鋼鉄の胸当て++(疾風+ガード)

 ミスリルの剣

 姫騎士シャインの装備は全て外されていたからだ。

「わかりました!」

「多分これからここにくるやつと戦うことになるから。サーベルじゃなくて悪いな」

「いえ。これで十分です」

 ちなみにステータスは、

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 シャイン(オーガスタス・スターマイン)

 18歳  姫騎士

 レベル 69

 スキル 中級剣術 パリィ 受け流し 三連突き

 ユニーク 王女の威厳

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 まぁ、大丈夫だろう。

「さて、俺たちも装備をするぞ」

「「「「おう」」」にゃ」

 さらに戻って来たイザナ。

「もう私の仕事はなかったじゃないか?」

「あははは、こんなこともあるさ、今からが仕事だ」

「はぁ、まぁ、この鬱憤を晴らすとしようかね」

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