第3話 回復


「出来ることはやったからあとは実技だけだな」

 テストはもう終わった、楽勝としか言いようがない問題だ。

「おうおう、Eランクのやつはどいつだ?」

「目の前にいるだろ?サッサと実技の試験をしてくれよ」

「はっ!ゴミみたいな鎧着込んで、ゴミかと思ったぜ」

 コイツはぶちのめそう!

「それじゃ実技試験開始」

「ほれ!」

“キン”

「もっと本気で来いよ」

「あぁ?カチンときたぞ?お前死んでも知らねーからな」

“フゥン”と風斬る音がしてガードするが吹き飛ばされる。

「けっ!やっぱゴミじゃねえかよ」

「んじゃ次はこっちの番だな」

「ん?生きてたのか?がっ!」

 俺は怪力で強化してから一撃をくれてやった。


「生きてるか?」

「いや、もう降参みたいじゃな」

「そうか、じゃあ」

「あぁ、リュウもDランクの仲間入りだ」

 そうか、これでやっと冒険者なんだな。

「リュウ!おめでとう!」

「リュウニイ!おめでとう」

 兄貴とサーシャが祝ってくれる。

「んじゃこれがDランク冒険者の証だ」

 ドッグタグをつけてくれる。

「よし!これで楽させてやるからな!」

「あはは、期待しないで待ってるよ」

「リュウニイ張り切りすぎないでね」

 兄貴とサーシャに今度は贅沢を教えないとな。


「もう行くのか?」

「あぁ、冒険者の朝は早いってね」

「そうか、んじゃがんばれよ」

「おう!兄貴も無理だけはするなよ」

 この時俺は有頂天だったと思う。


 俺たちが住んでる街の中心にある高い塔。

 通称ダンジョンで俺は強くなってやる。

 登るのにはDランク以上という決まりがある。ダンジョンに入って一人前の冒険者ってところだ。


 昨日のうちにしっかりと準備はしてきた。

 あとは入るだけだ。


 中に入ると薄く明るい、やはり聞いていた通りの場所だな。

 サッサと2階層への階段を見つける。

 下の階層は雑魚しかいないから2階層から俺の狩場だ。

 2階層はスケルトンだ、骸骨の頭を割ればドロップを落とす。

 さんざんスケルトンを倒してドロップは骨粉が13袋に骸骨の剣が2本、コインが11枚集まった。骨粉は農家に買われる。肥料になるそうなので袋に入れる。骸骨の剣はそれなりに使えるが耐久性がないのであまりお勧め出来ない。そしてコインが11枚!これで14枚集まったことになるな。


 俺はガチャの画面を出して10枚入れるとやはり11連ガチャになった!

 ここで引く。

 銅色が五個、銀色が三個、金色が二個、虹色が一個あった!銅色から、

 ・鉄の剣+

 ・鉄の鎧

 ・鉄の胸当て++

 ・鋼鉄の剣+

 ・鋼鉄の小手++

 おぉ、いいじゃないか!鉄の胸当てと鋼鉄の剣、鋼鉄の小手を装備する。次は銀色、

 ・生活魔法の魔導書

 ・疾風のダガー

 ・マジックバック

 これもいいな!魔導書は読むだけで覚えられるし、疾風のダガーも兄貴に良さそうだ。マジックバックってまじか!これはいいものもらったぜ!

 次は金色、

 ・スキル 短剣術

 ・罠探知

 罠は10階層からでるから今持ってても、でも備え有ればだからな。短剣術かぁ、できれば兄貴にあげたいが。スキル玉じゃないから揚げるのは無理だな。

 最後の虹色は、

 ・ラック上昇


 またかよ!これで2回目だろ?

あと10連やるのにまた貯めないといけないからやるけどさ。


 よし!マジックバックにさっきのは詰めたからまたコイン集めのために骸骨倒しだな。


 さっきよりサクサクスケルトンを倒してコインを8枚ゲットしたところで下に戻りギルドに向かう。


「おいリュウ!お前の兄貴が怪我したぞ!」

 親父さんがすっ飛んでくる。かなり慌てているようだ。

「な!どんな怪我だ!」

「それが、今夜が山場だろうな」

「うそだろ!」

「おいリュウ…」

 俺は走った、これだけは金で買えないものなんだよ!


 家に着くとサーシャが泣いていた。

「サーシャ、兄貴は?」

「リュウニイ!私が悪いの!私のせいで」

 サーシャは地べたに座り込んで泣いている。

「…り、リュウ、悪いドジ…こいた」

 兄貴は脇腹が抉られているな。

「俺が治す!俺にはそれが出来るはずだ!」


 俺はガチャの画面を見る。お願いだ。兄貴を救える力をくれ。

 11連ガシャを回すと、銅が3個、銀が3個、金が4個で虹が1個。

 ・鋼鉄の短剣+

 ・鋼鉄の槍+

 ・鋼鉄の胸当て++

 銀は?

 ・回復魔法の魔導書

 ・マジックポーション

 ・マジックポーション

 やった!これで兄貴を助けられるかも!

 俺は急いで回復魔法の魔導書を開くと体の中に何かが入ってくるのがわかる。

 よし!

「ヒール!」

“プワッ”と光るだけでまだ足りない。

「ヒール!ヒール!」

 兄貴の脇腹に空いた傷はジュワワワと言っている治ってきているんだ。

「ヒール!ヒール!ヒール!」

 兄貴の脇腹から聞こえる音は大きくなっているが俺に襲ってくるこの頭痛はなんだ?

「ヒール!」

「リュウニイ!魔力がないから魔力欠乏のサインが出てる」

 魔力?さっきの!

 俺は瓶を拾い開けて飲むと、またヒールを繰り返す。

「リュウ…お前」

 チッ!また頭痛が!まだ一本あったはずだ。

 瓶を拾い開けて飲むと頭痛が癒える。

 そしてまたヒールを繰り返す。

 そして俺は魔力欠乏で倒れたらしい。


 気付いてガバッと頭を上げると、兄貴が上半身を起こしていた。

「あ、兄貴!」

「おう!お前のおかげで全快だ」

「よ、よかった」

 俺は大事なものを守れたんだ。

「サーシャがずっと心配してたぞ?魔力欠乏は死ぬこともあるらしいからな」

 そうなのか、サーシャには悪い事をしたな。

「あぁ、兄貴の怪我で精一杯だったよ」

「リュウ、このことは誰にも話すなよ」

「言うわけないだろ?俺は口の固い男だ」

「回復魔法は神官しか使えない魔法だ。それをお前が使ったなんてな」

「あぁ、あの金にがめつい神官だよな?そりゃ黙っとくぜ」

 サーシャが目を覚ますと泣き喚いて大変だった。がそれよりも大変なのがギルドへの報告だな。

 まぁ、親がポーションを隠していたと言うことにしよう。

 このことはもう話さないようにしないとな。

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