第6話 カイルとリン@『地球2』

 俺はカイル・スプリンガー。アレックスの弟だ。


 今年、アバトロイドの上級パイロット養成所、通称『鳥の巣』に入ったばかりなのにやっかいな事件に巻き込まれ、ようやく一件落着した。


 あれから2か月。相変わらずの訓練生活とちびっ子リンにまとわりつかれて、忙しい毎日を送っている。


 しかし、しかーし。なぜか最近変な感じになってきたんだ。


「ムフ」


 でもそれは嫌な感じでは無いんだ。逆にすごいいい感じだ。

 何とパイロットの腕が急に上がり始めたんだ!!

 今まで歯が立たなかった首席の兄貴に対して、最近はどんな種目でも勝てるようになってきたのだ。


 どういう意味か分かるか? 鳥の巣ナンバーワンなのだ!


 今では指導者のクレイとも対等になれる。この国のトップパイイロットの一人だぜ。すごいだろ。


 でもだな、腑に落ちないこともあるんだ。

 ナンバー2のことさ。

 

 ナンバー2がアレックスでもエミーでもミアでも無いということなんだ。

 さらに別格のサーシャでもアナでもない。この2人はチート級なのにだ。


 じゃあ誰がナンバー2かって?

 

 なぜかリンなんだよ。12歳のチビがだ。

 

 俺が上達するのは天性の素質だが、なぜリンも急に上達するんだ? 

 兄貴も言っていたけどありえないぜ……


「カイル! カイルってば! さっきから呼んでいるのに、何ボケーッとしているのよっ」

 噂をすればそのリンだ。また寄って来たよ。


「なんだよ」

「一緒に帰ろうって言ってるでしょ」

「悪い、聞こえなかった」

「まったく。ほら手をつないで」


「やだよ、はずいだろ」

「だめっ。はい」


 無理やり手をつながれた。俺の気分は彼氏と言うより父親だ。


「今日も、カイルんでゲームやろ♡」

「お子ちゃまは勉強しろよな」

「やーだねえー」


 リンは舌を思いっきり出した。

 カイルがその舌を指ではじく。


「汚いわねっ、何すんのよ!」

「おまえのベロが生意気なの」

「意地悪!」


 鳥の巣からカイルの家までの道のりには豊かな自然があり、人もまばら。

 二人はふざけ合い、時にはくっつき合いながら下校の時間を共有した。


 鳥たちのさえずりがBGMとなって2人を包んでいた。


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 二人の様子をモニターで見ていたのはスターバックとサファイア。


「今の所、特に問題なさそうね」

「だろ。心配ないってば……」

「まだ始まったばかりでしょ。ほらコーヒー淹れてよ!」


「はーい、はい。サファイア様はだよね~」


 強調している。


「その言い方、どういう意味よ?」

「なんでもありませ~ん」


 スターバックは逃げた。


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