第12話 伝説の戦い

上条拳は勇気を振り絞る。

「進もう。このダンジョンは広い。ひたすら探索しないと見つけることもできないだろう」


100メートルほど進んだ時だった。


「ぎゃーーーー」


後ろから悲鳴が聞こえた。 


急いで振り返ると。


いた。


「クイーンデーモンフルヒトスパイダーだあああ!」


後ろを振り向くと、悍ましい姿が豪邸並みの大きさでそそり立っている。


「全員戦闘準備!」

みぃさんは冷静に全員に声をおくる。


12本もある鋭利な足でSランク冒険者を攻撃する。


“怖すぎだろ“

”まさに悪魔”

“気づいたら後ろにいるとかホラーやん“

”the end of the world”


全世界の人々が注目する伝説の戦い。

それが今まさに始まろうとしている。


ゲコリーヌは最前線に駆けつけて、多くの鋭い足の攻撃をかわす。

ブラックドラゴン?そんなの比にならないぐらいの大きさと強さ。配信を見る誰しもが勝てないと確信した。


もしここでSランクではなくAランクが戦っていたら、そのAランク冒険者はすぐに穴の空いた死体となっていただろう。それぐらいSランク冒険者がギリギリかわせるぐらいの攻撃の連続だ。


ゲコリーヌはブラックドラゴンの牙をも真っ二つにする勢いでクイーンの脚に剣を食い込ませた。


カン!


「切れない!?ギリギリ半分食い込んだかどうかぐらいだ」


他のSランク冒険者も脚に攻撃するが、少し傷かつく程度で切れそうにない。

ドラゴンをも簡単に切り裂く刃を無数に喰らいながらクイーンは平然と攻撃を続けていた。


全員の頬に汗が伝う。

全世界の誰が戦っても勝てなかった。伝説の存在。Sランク冒険者100人以上なら勝てると侮っていた。


上条拳はため息をつきつつニヤリと笑った。

「生配信中だが仕方がねぇ。あれを使うか。隕石粉砕拳」


それはゲコリーヌが攻撃した脚に直撃し、「パキッ」と言う音を立てて破壊された。


“上条拳すげえ!“

”いや、ゲコリーヌの攻撃が効いてただけだろ”

“同接1億2000万人wこれガチで世界中から注目されてるぞ“

”How strong are the Japanese?”

“今世界中の大統領が配信見てるらしいぞww“

”テレビでめっちゃ取り上げられてる!!”


ゲコリーヌは何か覚悟を決めたような様子で立ち止まった。


「あぶねえ!死ぬぞゲコリーヌ!」


無防備なゲコリーヌに悪魔の槍が降り注ぐ。


ブォン


その瞬間信じられない速さで脚の槍を避け、衝撃波が発生する。

ゲコリーヌはクイーンデーモンフルヒトスパイダーの脚を腕で掴んだ。


「サンダーウェイブ!」


まるで雷よように衝撃が走り、波のようにクイーンデーモンフルヒトスパイダーが揺れる。脚はミシミシと音を立て、巨大蜘蛛の悲鳴が聞こえる。


キーーーーーー


途端に空気が重くなる。


「何かがくる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る