第7話 衝撃
「どうだいハハーン、新しい世界は。人が多くって明るいだろう?」
左手の人形に話しかけてみるが、ハハーンから返事はない。真顔でパペットに話しかけているおれを見て、
ひとしきり街中を歩くと、おれはアパートの近所まで引き返してきた。ハハーンに変化は無いし、蒸し暑い夏の夜を歩き続けることにも飽きてきていた。
「コンビニ寄って帰るか」
夕飯とビールでも買ってアパートに帰り、サブスクで映画でも見て
コンビニの中に入り、適当な夜食と缶ビールを取ってレジに向かった。
「あ、ヘンタイの人」
レジで会計をしようとして硬直した。レジにはコンビニの制服を着た楓が立っていた。
「あ、あ、あ~、う~っ」
ここでバイトしてるんですかと言いたかったが、混乱していたせいであ~とかう~としか言葉が出て来なかった。楓が急いでいたのは、バイトに遅れそうだったからに違いない。
「袋はご入用ですか?」
不必要なほど冷たい声で楓が
「ふ、ふくろう、ですか?」
「ふくろうは鳥です。コンビニで鳥を売ってるの見たことありますか?」
聞き間違いを訂正することもできず、おれはただハイスイマセンと間の抜けた返事をした。
楓は
「袋はサービスします」
「あ、ありがとうございます」
袋詰めした商品を差し出されたおれは、楓に向かって左手を差し出した。
「あっ!」
小さな声を上げて、楓がおれの左手に視線を向けた。つられて目を向けると、ハハーンが楓の手首に嚙みついていた。
「な、なにしてんだよ、お前」
楓の手首に噛みついているのは、人形ではない本物のハハーンだ。小さいとはいえ、口の中には鋭い牙が何本も生えている。
「い、痛いです」
楓が顔をしかめておれを見る。だが、どうやっても、ハハーンと化したおれの左手はかえでの手首から離れなかった。
「フンッ!」
ハハーンの体が動き、連動しておれの左腕も動いた。右手首をハハーンに噛みつかれたままの楓の体がカウンターから引きずり出されて宙を
「何するんだ。やめろハハーン」
大声で叫んだが無駄だった。なぜならおれの声は、コンビニの自動ドアを突き破って突進してきたRV車の凄まじい衝撃音に
宙を飛ぶ楓の体を抱き
店のカウンターを破壊し、
「いってぇ」
店の半分を破壊して停車したRV車から10㎝も離れてない床に転がったおれは、顔をしかめながら上体を起こした。
「あの・・・・・」
声を掛けられて気づいたが、おれの両腕は楓の体をしっかりと抱きしめていた。
「あ、ごめん。大丈夫?」
楓を離して立ち上がった。店の中は爆撃でも受けたように
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