第7話
このへんでは値の張る鮨屋のカウンターには、佐々木秀行と中野基晴のほかには中年のカップルが座っているだけだった。
入ったときは二人組みの中年サラリーマンもいたが、一時間ほど前に店を出ていた。
「おまえ、年とったなあ」
秀行は、隣で日本酒をぐいとあおった同じ年の基晴を見て言った。
基晴の顔は若い頃に比べ、より多くの脂肪を蓄えていたが、全体の張りは失われ、大小の皺に埋められていた。
生え際もかなり上がってきている。
「あん?」
そう言って秀行をにらむ基晴の目元は赤く染まり、目が据わっている。
「なんでもないよ」
秀行がそう言うのを確認して、基晴は磨き上げられたカウンターに突っ伏した。
まもなく小さないびきが聞こえてくるはずだ。
若い頃から酔うと眠ってしまう男だったが、年をとるごとにつぶれるまでの時間が短くなっていた。
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