第3話

 一人になり、社会人になった民子は化粧をするようになった。

 母がしていたのよりずっと薄い化粧を施し、会社に通った。


 民子は美しかった。

 職場の男たちは、仕事中にたびたび民子に目を奪われるようになる。


 民子は女性社員のやっかみの対象になった。

 民子はまたかとうんざりと思いながら、一人で過ごすことを覚悟した。


 生理がはじまるより前から、こんなことの繰り返しだった。

 人気のある男の子が民子に目を奪われる、若く魅力的な教師が民子を凝視する、尊敬を集める校長がわざわざ教室にやってきて民子に声をかける。


 さまざまなことをきっかけに民子はいじめられ、無視された。

 会社では民子は「化粧臭い」と言われ、いじめられた。


 民子は幼い頃のことを思い出す。

 いつも自分は「臭い」といじめられる。


 それは制服に汚れた水をかけられたりするためだと思っていたが、本当に自分は臭いのではないのだろうか。

 自分が気づいていないだけで。


 民子はこの頃から大量の香水を身につけるようになる。

 職場の人間はいじめられた民子がおかしくなったと噂した。


 男たちはそんな民子を見ることをやめた。

 それで、民子へのいじめはおさまった。


 しかし、民子は浴びるように香水をつけることをやめなかった。


 それはいろいろな人間に好きなように蹂躙されることから、自分の身を守るためにやっていたのだと思う。

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