第2話
幼い頃に父を亡くしていた民子だが、母も民子が高校を卒業すると同時に死んだ。
民子の卒業を待っていたかのようだった。
母の一周忌に、母を雇っていたスナックのママが涙ながらに母の話をした。
それは好意ではなく、悪意からだったと民子は思う。
民子の父は工事現場で死んだ。日雇いの作業員だった。
母は三日ほど泣いたあと、民子を一人で育てるために仕事を探した。
一ヵ月後、民子の母はスナックでの仕事を得た。
そこはスナックとは名ばかりの売春宿だった。
母は夕方に施した化粧を崩しながら、日焼けた畳の上で、男達に体をひさいていたのだ。
ママは泣いていた。
金を得たいからと言う母のすることを止められなかったと民子に詫びた。
「嘘ばっかり」
干からびた肌に派手な化粧を施したママは、母が稼いだ金の大半をピンはねしていたはずだ。
男に体を売れとせまったのもこの女に違いない。
母をよく知る民子には確信があった。
ママに思ったことを汚い言葉でぶつけてみる。
民子の言葉にママは一瞬体を縮めたが、嘘泣きを続けた。
民子はその背中に「死ね」と投げつけ、ママに背を向けた。
早足に去る民子の耳に、ママの舌打ちはしっかりと届いた。
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