第12話 決意

 王城を離れたミカル達は王都を通り越し、王都から少し離れたリゼーヌ村という小さな村で、休息を取ることとなった。


「アリア、今朝から少し顔色が悪かったが、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」


 とは言ったものの、今朝から頭が痛いのと、寒気がするので、大分、調子が悪い。ミカル王子やミカルに仕える騎士達に心配はかけたくないが為に、言い出せなかったのだが。


「大丈夫な顔に見えないんだが。まあ、今日はゆっくり出来ると思うから、休んでくれ。俺と護衛の奴らは隣の部屋にいるから、何かあったら声を掛けてくれ」

「わかりました」


 ミカルが部屋から出て行ったのを確認し、アリアは白いふかふかのベットに寝転がる。

 王都を離れてから、3日が経った。アリア達は今、リゼーヌ村という村の宿屋にいる。


「皆んな、心配しているだろうな」


 自分が帰るべき場所であるティゼ村のことを思いながら、帰ったらこっぴどく怒られるか、暫く、外出出来なくなりそうだな。という良くない方向に事が進むかもしれないという不安に駆られる。しかし、そうなる前に謝ればいいのだとアリアは自分に言い聞かせた。


「私はミカル王子を、これからも守ることはきっと出来ない」


 アリアはミカルの騎士でもなければ、友人でもない。ただのごく普通の何処にでもいる平民である。けれど、自身が持つ力が人の命を救う事が出来ることをアリアは身をもって知っていた。

 過去にもティゼ村にいるであろうアリアの親友であるティナ。彼女が義理の兄から性的な虐待をされ、誰にも言うことができないまま自ら命を断とうとする未来を見たアリアは、そうなる未来を回避する為、行動を起こし、大切な一人の親友を救う事が出来た。


「もし、叶うのなら、私はこれからもミカル王子を自分の持つ力を使って、守っていきたい」


 アリアは村に帰ったら自分の気持ちをベルディに伝えようと心に決めたのであった。

 窓から見える空は茜色に染まりつつある。アリアの紫の瞳に空の色が揺れるように映った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る