第8話 夜の温もり

 リディアール王国の王都ルティールとは反対に位置する街〈セディア〉

 ミカル、ディオール、アリアの三人はセディアの街にある宿屋が泊まることに。しかし、宿屋にある部屋が、一部屋しか空いていなかった為、二部屋、借りることが出来なかった。よって、三人は同室で一夜を共にすることになったのである。




 その日の夜、アリアは夢を見た。

 バルハール帝国の暗殺集団にアリアが連れ去られそうになり、何とか逃げようと走るが、迫り来る追っ手に捕まってしまいそうになる。そんな悪夢のような夢を見た。


「んん……嫌……こないで……」

「大丈夫か?」


 アリアはうなされていた。しかし、ミカルの声で目が覚めたのか、ベットから身体を起こす。


「大丈夫です。起きてたんですね」


 平然とした顔でミカルに返事を返したが、アリアの体は震えていた。ミカルはそんなアリアを見て大丈夫には見えないな、と心の中で呟き、アリアを抱き寄せ、安心させる為に背中を優しく撫でる。


「大丈夫、大丈夫だ。アリア」


 ミカルの声が心地良くアリアの耳に届く。

 落ち着く、安心する。そうアリアは思った。そして、また、意識を手放した。


「寝ちゃったか」


 ミカルの腕の中ですー、すーと寝息を立て寝ているアリアを見て、ミカルは優しい笑みを浮かべて、ベットの上にアリアを寝かせ、白い布団を掛けてやる。


「俺とこの娘は出会うべくして出会ったのかもしれないな」


ミカルは腰を下ろしていたアリアが眠るベットから立ち上がり、隣のベットで眠るディオールの方に視線を向ける。

 どうやら、ディオールは熟睡しているようだ。疲れが溜まっていたのだろう。

 ミカルは『いつも、ありがとうな』と眠っているディオールに告げて、部屋に窓の前まで足を運ぶ。


「綺麗な夜空だ。皆、どうしているだろうか?」

 

 部屋の窓から見える夜空を見上げて、ミカルは静かに呟いた。 

 

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