第9話 再びの王城
翌日の朝。
ミカルはディオールとアリアに一度、城に戻りたいということを伝える。
「一度、城に戻って、自分の騎士を数名連れて行きたい。ディオール一人だけではやはり不安だからな」
「そうですね。けれど、城に戻ることは危険が伴うかもしれないので、ミカル王子殿は城に入ることはしないで頂きたく思います」
ディオールはミカルの身を案じてそう告げる。アリアもディオールの言葉に強く頷きミカルを見た。
「ああ、わかった」
✤
翌日の早朝に宿屋を出て、昨日振りに城に戻って来たアリア、ミカル、ディオールの三人。ディオールはアリアにミカルの側に居るよう任せ、城に入って行った。
城近くの坂道に残されたアリアとミカルは互いに口を開くことなく、無言が続く。
アリアは心地良い朝の空気を感じながら、隣に立つミカルを横目に見る。
(初めて会った時はそんなに意識して見てなかったから思わなかったけど、綺麗な顔してるんだな)
アリアは心の中で、ミカルの整った容姿に感心する。
「アリア、お前は何処出身なんだ? 帰らなくて大丈夫なのか?」
「私はティゼ村という村出身です。帰らなくて大丈夫という訳ではありませんが。心配はしているかもしれないです」
アリアは苦笑しながらそう返答し、明るくなり始めている空を見上げる。
本当は長老に頼まれていた茶葉を受け取り、王都の店々を少し見て回ったら、帰るつもりでいたが、ミカルと出会い、未来を見たことによって、状況が変わり、こうして今に至るのだ。
「そうなんだな。今からでも帰った方がいいんじゃないか?」
「その方がいいのかもしれませんが、私はまだ帰れません。未来を見てしまったから」
未来を見た相手が、このリディアール王国の第一王子であったからでもあるが。自分が帰ったら、良くない未来が起きてしまうかもしれない。そう思ったからでもあった。
「そうか」
未来を見れる力を持つアリアのことをミカルはいい意味で気になっていた。昨日、出会ったばかりだが、まだ、名前と生まれ育った場所しか知らない。
暖かな朝の陽の光に照らされながら、ミカルとアリアはそれぞれの思いを胸に、ディオールが戻って来るのを待っていた。
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